2013年04月11日

「彼女をイランの研究に向かわせたものとは?」file.1

「久しぶり!元気?」
イランに単身渡り、半年の調査から帰国した彼女は、
いつもと変わらぬ明るい笑顔と声で、迎えてくれた。

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科にて、
イランの「女性」や「文化」について研究している内山明子さん。
大学時代の友人だが、自分が社会人になって、
彼女のイランでの日々が綴られたFacebookを読むにつれ、
彼女の話を聴きたいという気持ちはますます大きくなっていった。  

なぜイランという国を選んだのか?
その背景に何かが隠されているのではないだろうか?
そんな思いに突き動かされ、
京都の呉服屋を改造してできた中華料理のお店で、ゆったりと過ごしながら
インタビューが始まった。

☆☆☆☆☆
ーーイランでは内山さんのような若い女性も、
なるべく肌を露出しないようにと法律で定められているとお聞きしました。
日本とは文化が違うのでしょうね。

内山:そうやね、日本では、ファッションが法律で禁じられることなんてありえないけれど、
イランでは法律である程度規制されている。
ラインを強調する服装も好ましくないとされているね。
イスラームでは「女性は守られるべき存在」という観念が基本的にある。
だから若い女性が一人で外出するときは、友人が心配してついてきてくれたりと、メリットもあるの。
女性が一人で現地で研究していると、少し危険な目に遭うときもあるけれど、
本当に人には恵まれているの。

ーー自由が制限されているというのは一面的な見方だったのですね。
そもそも、イランの女性を研究テーマにしようと思ったきっかけってあったのですか?

内山:日本とはかなり異なった文化背景をもつ国で、
女性がどのように考え、生活しているのかを知りたいと思ったから。
歴史の授業が好きだったのだけれど、
勉強していてワクワクする地域が中東だったというのも理由の一つかな。

ーー元々、歴史が好きだったのですね。歴史に興味をもったのはいつからですか?

内山:父親が日本史の教師をしていた影響もあるのかなぁ。
小学生の頃、父の机の上に「ゴーマニズム宣言」(小林よしのり著)が置いてあって、
漫画だったから偶然読んでみたの。
父のものではなくて、借りてきた本だったらしいんだけど。
そこには、『日本による戦争は間違っていた』という自分の考えを
正面から否定するようなことが書いてあった。
小学生なりに学校で習ったことから作り上げていた歴史認識が、揺らいでしまって。
自分の認識と、漫画に書いてあったことと、どちらが正しいのかわからなくなって、
しばらくしてから父にどうしたらいいか聞いてみたの。
父の反応はこうだった。「自分の目で見て、聞いて、判断しなさい。」と。

ーー素敵なお父様!その言葉が内山さんを「フィールドワークでの研究」に向かわせたのかもしれませんね。
小学生以降で、フィールドワークをしようという気持ちが強まった経験はありますか?

内山:高校生の頃、現代社会の授業で、ある先生が「宗教」について、面白い見解を話してくれたの。
「日本では、特定の宗教を信仰していると野蛮、といった価値観が一部あるけれど、
世界では、宗教をもっていないことが野蛮、という価値観もあるのだよ。」
大げさに言ったのだろうけれど、当時の私は本当にびっくりした。
価値観は多種多様なんだということ、
そして、自分が知らず知らず持っている固定観念に気づくことが大切だと学んだ。

ーー衝撃的発言ですね(笑)実際に大学で地域研究を専攻し、初めてイランに調査するときは、
周囲の人から驚かれたりしませんでしたか。内山さんの価値観や志向を一番理解してくれている人は?

内山:母親かな。最初、イランに行くといったときは驚かれたけど。
悩んでいることをちゃんと話せる。
元々「考えること」が好きな人で、研究のヒントになる意見を言ってくれることもある。
例えば現地の人のインタビューの仕方について、
「やみくもに話を聞くより、年齢や年収など色々な変数で見るといいよ。」って。
研究者ではないのにね。

ーーお母様の発言、鋭い!よき理解者なのですね。
最後に、これからどんな進路を考えているか教えていただけますか。
研究をずっと続けていくのですか。

内山:研究者の道は考えていなくて。
最初は国連のような国際機関で働くことを考えていたのだけれど、
詳しく調べるうちに、私のやりたいことと少し違うかも?と思い始めてきた。
研究を通じて「私が見聞きしたことや感じたことを、もっと多くの人と共有していきたい」
という気持ちも高まっている。
現在は、地歴の教諭も選択肢の一つ。
生徒たちと一緒に歴史を通して様々な世界を探究していきたいと思って。

ーー内山さんのような先生がいたら、歴史の楽しさや奥深さを実感できる生徒が増えるんだろうなと思いました。
今日はたくさんお話を聞かせてくれてありがとうございました。

☆☆☆☆☆

今回は、研究内容よりもむしろ、
彼女が研究を始めることになった背景にある「教育体験」を探りたいと思っていた。
インタビューをしていて、私が彼女に惹かれる理由がいっそう明らかになってきた。
彼女の多様性を受け入れるキャパシティーは本当に大きいと感じていたが、
今回は「その根底に流れているもの」にふれられた気がする。
一冊の漫画、一つの授業、父親からの一つのメッセージ、
それらと真剣に向き合い、考える彼女だからこそ、
人よりも色々な世界を見る視野が育っていったのではと感じている。

いつか、彼女の見ている「歴史のタペストリー」をもっともっと語ってもらいたいと思い、
帰途についた。
posted by メイリー at 22:45| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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