2013年05月26日

紛争解決のエキスパートを目指す file.8(後編)

ーー片野田さんは国境を越えて今後活躍していかれると思いますが、
日本にいる家族や友人と離れることに寂しいといった気持ちはありますか。

片野田:う〜ん、正直なところあまりないですね。
一人でどこにでも行けますし、現地で仲間もつくれるので。

ーーたくましい!こうしてどんどん行動なさっていますが、
小さい頃のご家族の影響などはありますか。

片野田:実はあまり幸せな家庭ではなかったんです。
父親から暴力をふるわれたこともありますし、
当時は「なんでこんなことをされるんだろう?」と思っていて、
悪夢や幻聴に苦しんだり、自殺を考えたりしたこともありました。
学校生活が楽しかったのが救いでしたが…。
こうした経験は、紛争問題に興味をもったことと大きく関わりがあると思います。
世界にはもっと苦しい境遇の人たちがいる。
人は生まれる場所を選ぶことはできない。
経済的豊かさも、教育の機会も、紛争地に生まれると得ることはなかなか難しい。
そうした状況に思いを馳せることが、心のよりどころになっていたのかもしれません。

ーーそんなつらい体験をされていたのですね…。
苦しい状況を重ね合わせつつ、紛争地の人たちを助けよう!という
プラスの力に変えられたのは
ただただ、すごいことだと思いました。

片野田:もう一つ自分に大きな影響を与えた経験があります。
高校から寮に入り、硬式野球を始めたのですが、
入部当時は上下関係が厳しく、当然のように暴力もあり、
そんなものなのかと思っていました。
ところが、自分が先輩になったときに、
「暴力は絶対ダメ」という方針にがらっと変わったんです。
にもかかわらず私は後輩に暴力をふるってしまったことがあり、問題になりました。
そこで「暴力はいけないんだ」と身にしみて理解することができ、
今思うと、そこで気付けて幸運でした。
暴力を受けていると、暴力をふるうことも容認してしまい、
暴力の連鎖が生まれてしまうんです。

ーー暴力の連鎖ですか…。
紛争地に限らず、身近なところでも起きている根深い問題ですね。
片野田さんには他にも心のよりどころになるようなものはありましたか。

片野田:「お笑い」が小さいときから好きでしたね。
高校時代は先輩と漫才をしたり、ネタを書いてM1に出たこともあります。
「お笑い」って、その場に楽しい雰囲気をつくることができますし、
ウケたときにすごく気持ちいいんですよね。
「笑いの力」は、芸術などと同様、国境を越えられると思っています。
何らかの形で紛争解決と「笑い」を結び付けたいと考えています。

ーーそれは素晴らしいですね!
「笑い」って精神的に人を癒す効果もありますものね。

片野田:笑っているときはつらいことも忘れられる、というのも
「お笑い」が好きな理由の一つでしょうね。
子どもの頃、自分のつらい経験を一切他の人に相談できなかったんです。
こうして語れるようになったのもこの1,2年のことです。
時が解決してくれたというか、今やっと冷静に分析できるようになってきたかなと。
実は日記を書いて、過去を振り返る「内省」の時間を取っているんです。
そこから将来やりたいことのヒントがもらえますし、
精神的にきつかった時期が、逆に自分の「強み」なんだということにも気付けました。

ーーかけがえのない強みですね。片野田さんのように、やりたいことを見つけるには
どうしたらいいと思いますか。

片野田:情報を集めることですかね。
今の時代、ネットがあれば情報はすぐ手に入りますし。
興味をもてばすぐ飛び込む。そうすることで色んなものに出会えます。
Homedoorという、ホームレス問題に取り組むNPOに関わりだしたのも
自分で調べて団体の門戸を開いたことがきっかけです。
この団体はホームレスを生み出さないニホンの構造をめざし、
元ホームレス・生活保護受給者の自立・雇用創出を目標に、
HUBchariというサービスを大阪で始めています。
自転車を共有でレンタルできる場所を各地に作って、
そこでの接客や自転車の修理などを元ホームレス・生活保護受給者がおこないます。
放置自転車解決も兼ねた事業です。
あとは、大阪市西成区にある釜ヶ崎という地域のツアーをしたり。
今度、貧困について考えるワークショップを母校で開くことになっています。

☆☆☆☆☆

「小学生の頃から紛争問題に興味をもっているって珍しい。なぜだろう?」
「彼がこんなにも社会貢献に打ち込めるのはなぜ?」
当初抱いた疑問のピースが、インタビューを通じて、
少しずつ一枚の絵を形作っていった。
もちろん、この絵は完成することなく、常に進化を遂げていくのだろう。

幼い頃の苦しい体験を、
「社会貢献・夢の実現」というプラスのエネルギーに変換していけるということに、
畏敬の念、いや、言葉では表せない感情を抱いた。
弱さを知っている人だけがもてる「強さ」。

大学や留学先での国際的で刺激的な環境が、
彼の中に元々あった、チャレンジ精神や、
異なる背景をもった人たちを受容した上で働きかけていく力に
ますます磨きをかけたのではないだろうか。

彼が述べていた「内省」の時間は、とても貴重なものだと感じた。
自分の心の声に耳を傾け、過去と今と未来をつなげていく作業。
日々続けることで、おのずと悩みの解決の糸口が見えてきそうだ。

秋から新たな門出を迎える彼は、現地の人たちに寄り添いながら、
「紛争解決のエキスパート」の道を本格的に歩き始める。
posted by メイリー at 14:54| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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