2013年06月20日

働くお母さんと子どもを支援する起業家 file.12(後編)

ーー「働く母親たちが危ない」という本との出会いはとても印象深いものだったのですね。
COLORのミッションや活動内容についても詳しくお聞かせいただけますか。

鬼木:自分がその本を読んで感じたことを
ワーキングマザーの方々に伝えたいという強い思いがあります。
おなじく、主婦として日々の育児に追われている人に
「自分のことをじっくり考える時間」をもってほしいなと。
そこからTwitterなどを通じて働く女性、主婦のニーズを拾っていきました。
子育てセンターは平日しか開いていないところがほとんどなので、
まずは共働きの親子が土日にゆっくり過ごせる場を提供しようと決めました。
私自身もそんな場をまさに求めていたので。
月に1回の料理教室を開くことにしました。
子どもたちの大好きな絵本に登場したメニューを親子で作る料理教室なんですよ。

ーーそれは子どもたちも喜びますし、大人も楽しいですね!
親子のコミュニケーションもどんどん進みそうです。
他にはどのようなことをされていたのですか。

鬼木:実はキャリアカウンセラーの資格を取った頃に、
ある方の紹介で就職活動を支援する塾で講師をやらせてもらったんですね。
大学生と深く関わることがあまりなかったので貴重な経験だったのですが、
「就職活動に、いかに親の関わり方が影響を及ぼすのか」を実感しました。
ある女子大生は、なんとお母様が勝手に就活サイトから彼女のかわりに会社のエントリーをおこなっていました。
お母様は「関西圏の大手に勤めてほしい」という思いを全面的に押し出されていて、
最初は彼女もそれに従おうとしていましたが、自己分析を行う中で、母親の希望とは違う道が見えてきて…。
別の子は、彼女の就職活動がうまくいっていないことを見かねてか、父親が就職先を探してきて「ここに行けばいい」と言ったらしく。
親から用意された逃げ道ができて、就職活動へのやる気が下がってしまったと思います。
他にも、就職先がなかなか決まらない男の子がいて、
親がその子の希望や適性を見ずに「公務員を目指しなさい」と薦めた例もありました。
就職支援の現場にいると、今の大学生の多くは
親の意向で就職先を決めようとしているのではないか、そこに大きな危機感を抱きました。

ーーそんな現状があるのですね・・・。
自分の進路なのになぜ自分では決めずに親に委ねようとするのでしょうね。

鬼木:彼らの子ども時代を辿っていくと、高校・大学受験でも
親の意見に従っていたことがわかり、
「親の意向に合わせる」ことが習慣になっているのだと気付きました。
ちょうどそのとき、リクルートの採用の仕事で経営者の方々がよく
「今の若手社員たちはすぐに挫けてしまうことが多い」と
おっしゃっていたことを思い出し、大学生の状況がつながりました。
すぐ挫けてしまうのは「自分で覚悟をもって意思決定をしていないからではないか?」
と思ったんですね。
そこで、子どもの頃に「自分で決める経験」を積んでほしいとの思いから、
「小学生によるご当地弁当商品化プロジェクト」を始めるに至りました。

ーー子どものうちに自分で決める経験は、
今後の人生を切り開く大きな力になりそうですね。
子どもや親御さんに特に伝えたいメッセージはありますか。

鬼木:親御さんには「子どもが自立していくのを信じてほしい」と思っています。
それが子どもの自信にもつながります。
核家族化が進み、母親に子育てがどうしても集中してしまいがちです。
そしてそのプレッシャーが母親の子どもに対する依存を強めていると感じました。

親に対しては、子どもの行動に口を出しすぎず、自分の人生を楽しもう!と伝えたいと考えています。
子離れ・親離れが大事なんだよと。
昨年始めたばかりなので、活動の効果を長期的に見ていきたいですが、
子どもたちは自信を得ていったことでしょう。
子どもにとって成功体験はエネルギーに変わるんです。
商品の企画から価格決め、パッケージ決め企業への営業まで自分たちでやるのですが、
最初はお店に電話をする手が震えていた子が、いつしか楽しそうに電話をかけているのを見ると、子どもの能力の伸びには心底驚かされます。

ーー親御さんたちも子どもの成長に驚いているでしょうね。
さまざまな形で成長の支援をされていますが、
キャリアカウンセラーの資格を取ろうと思ったきっかけは何でしょうか。

鬼木:キャリア理論を勉強してCOLORの運営に生かそうと思ったからです。
料理教室に参加してくださる親御さん向けに「COLOR通信」を発行しているのですが、
そこで学んだことをもとに、女性のロールモデルを探すお手伝いがしたく、女性のキャリアに関するコラムを書いています。
実はスクールに通うことで、「パートナーシップを築く大切さ」を実感しました。
当時1歳と4歳の娘を夫に預けて、3ヶ月間、土日に大阪のスクールに通ったのですが、
夫は子どもたちの世話がかなりしんどかったようです。
最初は応援してくれていたのですが、だんだん雲行きが怪しくなり、衝突が起きました。
私からすると「夫の転勤に、文句も言わずついていったのに…」という思いや、出来る時に遠慮なくやりたい、そういう思いでいましたが、
そんな心境の変化と幼い子どもをいきなり任せた図々しさに夫は耐えきれなかったようです。
でも、互いをさらけ出したことで、価値観も育った環境も違う二人なんだし、
認めあおうという結果に落ち着きました。

ーーそんなことがあったのですね。パートナーとの価値観や思いの「歩み寄り」がとても大切なのですね。
鬼木さんの今後の夢をお聞かせいただけますか。

鬼木:子どものうちに生き生きと働く大人にたくさん出会える場をつくっていきたいですね。
今の子どもは習い事がぎっしり詰まっていることが多く、
素敵な偶然に出会う機会を作りづらいんです。
今「応援する大人」として、大学生やビジネスパーソン、経営者の方々が参加して下さっているのですが、
大人には「子どもの強みを引き上げてほしい」と思っていて。
親や子ども本人が気付かない才能や能力を見出して伸ばしてあげられたらと強く思っています。
家庭環境やテストの成績に関わらず、子どもたちには平等にそういう機会があったらと願います。
私自身も、良い先生との出会いが子どもの頃にあったから、
素敵な大人との出会いが、たった1分でもあれば、子どもの自信や考え方に大きなインパクトを与えると思っています。
同時に、女性の経済的自立を自分自身も目指しながら、サポートしていきたいですね。
「ナラマーシカ」の活動も事業として回るようにしていきたいです。
起業の運営においても、「自分を信じる勇気」が大切だと実感しています。

☆☆☆☆☆

自分自身の「仕事と家庭の両立」に対するモヤモヤを
他のワーキングマザーや子どもたちの支援のための力に変化させていった鬼木さん。
インタビュー中も、終始穏やかな笑顔で話してくださり、
「受容されている」心地よい空気に満たされた。
彼女の優しいお人柄と、大変な時期を乗り越えることで得た前向きなエネルギーによって、
周囲の人たちも彼女を応援したい!と心を動かされているのではないだろうか。

現在、父母ともに育休を取得すると期間が延長できるという
「パパママ育休プラス」など、父親の育休を推進する動きが活発化している。
だが、まだまだ企業によっては、育休取得の制度があっても、その活用が進んでいない実態を知り、
「育休を取りやすい空気」、ひいては「育休を取ったことが仕事でもプラスに働くという認識」の広がりがいかに大切なのかを考えさせられた。

それと同時に、男女問わず個々人が
「職業人」だけではなく「親」としての役割も十分果たして、仕事も家庭も大切にしよう!と心から思えるような意識改革も大事だろう。

「子どもの力を信じる」
これは口で言うほど簡単ではないはずだ。
「子どもが苦労しなくて済むレールを敷いてあげよう」という親心も理解できる。
それでもなお「子どもの行動をそっと見守る」ことで、自主性や「やればできる!」という自信がはぐくまれていき、人生の節目を乗り越える原動力になる。
人生においての大事な学びをたくさん授けていただいたインタビューだった。
posted by メイリー at 23:20| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする