2013年07月12日

働きがいを感じられる社会実現を目指す起業家 file.15(後編)

ーーそんな経緯があったのですね。
他にも、影響を受けた「教育体験」ってありますか。習い事や授業など。

井上:振り返ってみると小1から中3までそろばんを習っていたこと、
父親が落語に連れて行ってくれたことが影響あるかもしれません。
落語って教養がないと楽しめないところがあるので、
わからないところは父親に「されってどういう意味?」って聞いていました。
あとは「ゲーマー」って称しているくらいシュミレーションやRPGのゲームにはまってきました。
そんなに裕福ではなかったので攻略本を買えないんです。
だから自力でゲームの内容を理解しないといけなくて、
因果関係を組み立てる力もついたのかもしれません。
あとは兄の影響もあってゲームがきっかけで「三国志」にはまっていました。
三国志のキャラクターは漢字表記なので自然と読める漢字が増えていきました。
ゲームをクリアするために、図書室にある分厚い「三国志」の本を小2・3で読んでいました。
塾に通ったことはないですが、落語や三国志で言語能力が磨かれたのかもしれないですね。
あと、漫画も好きで、大学時代の話になりますが、
国語が苦手な子の家庭教師をすることになったとき、
その子が興味をもちそうなドラゴンボールの漫画を読ませて、
手書きのオリジナル読解問題を解かせたことがあります。
「このときの主人公の気持ちは?」「気持ちを表している文章はどこ?」とか。
読解の本質は同じなので、漫画をとっかかりにして
その後小説や論説文といった形式に慣れてもらうようにしました。
自分に対しても人に対しても「興味を持てること」を大事にしてきた気がします。

ーーそろばんと落語と三国志。ユニークな組み合わせですね。
今度は、現在のお話になりますが、起業をしてからどんな

井上:実は「よし起業するぞ」というのが先で、それから事業内容を決めたんです。
立ち上げれば何とかなると思い、最初は気合いで数件仕事が舞い込みましたが、
壁にぶち当たりました。
ですが、社会起業大学で知り合った年配の友人が顧客を紹介してくれて。
あとは、クラウドファンディング(ネット募金)サイトを通じて
30万円集めるという課題が与えられましたが、俄然やる気が高まり、
無事集めることができました。そこから上向きになっていきました。
社会起業大学のソーシャルビジネスグランプリで卒業生枠として予選・本選に出場し、
見知らぬ方々から共感いただいたことも自信につながりましたね。
早期離職者のインタビュー白書を出版したときも、
勉強会に足繁く通っていたときに知り合った大学教授の方に贈呈したら興味をもってくれて、
学生の前で講演するという仕事につながったり。

ーーそうだったのですね。大学生の前で講演することも多いかと思いますが、
学生たちに特に伝えたいメッセージはありますか。

井上:コアとなるメッセージは次の3つです。
1つ目は「自分なりの強みをもとう」。
よく経営者の中で「富士山はみんな知っているけど、
日本で二番目に高い山はほとんどの人が知らない。だから一番を目指せ」
という方がいますが、僕はちょっと違うと思っています。
富士山は日本一だけど、実は日本には世界一の山があるんです。
それが、高尾山。
高尾山って来場者数が世界一なんですよ。
高さという観点では富士山に遠く及びませんが、来場者数だったら世界一になれるんです。
高尾山は偶然1位になったのではなく、立地を活かした戦略で独自の地位を築いてきたんだと思います。
2つ目は「瀕死になっても即死にならないことの大切さ」。
車の運転でもシートベルトをするだけで即死の可能性はぐんと下がると言われています。
自分の人生で自分なりのシートベルトやエアバッグを備えておけるかどうかが、
壁にぶつかったときの勝敗を分けます。
例えば僕は結果的に社会起業大学で知り合った人々がシートベルトになってくれて、ピンチを乗り越えることができました。

ーー「人のネットワーク」が井上さんにとってのシートベルトだったのですね。
そのシートベルトを維持するためにどんなことを心がけているのですか。

井上:最初は意識したことはなかったのですが、
結果的には嘘をつかないことと、恩を仇で返さないことです。
例えば、お世話になっている人に呼ばれたら、
できる限りスケジュールを調整して参加するようにしています。

ーーなるほど…。3つ目のメッセージは何ですか。

井上:「共感してくれる人を増やすこと」です。
学生の皆さんには共感までのプロセスを説明しています。
まずは理解と納得を経て初めて共感の土壌ができます。
自分が実現したいこと、どんな思いでどういう社会を目指しているかをきちんと説明することが大事ですよと。

ーー3つのメッセージ、社会人になる前にぜひ聞いておきたかったです。
現在、新規事業に向けて動いているとのことですが、概要を教えていただけますか。

井上:現在、メンタルヘルスに関するwebサービスを展開する予定です。
「カイラボ」のミッションでもある「生きがい・働きがいのある社会実現」において仕事のストレスという問題は切っても切れないので。
ストレス度チェックといったサイトはすでに存在しますが、根本解決にもっと貢献できるコンテンツを提供したいと思っています。
また、研修やコンサルティングだけでなく、若手社会人向けのセミナーにも力を入れようかなと。
その一環として、7月からゲームを取り入れてキャリアについて考えるセミナーを開催していきます。
自分自身、ゲームが好きで、ゲームを通じて「自分だったらどうするだろう」と考えることが多かったので、ゲームには魅力を感じています。
そして、「カイラボ」自体を「働きがいのある会社」にしていくことが今後の目標です。
現在ほぼ1人で運営していますが、仲間を増やしたいですね。
「忌憚なく意見を言ってくれる人」を大事にしたいと思っています。

☆☆☆☆☆

今年で28歳と思えないくらい多彩な経験を積まれた井上さん。
どんな環境でも生き残れる強さと、
ロジカルに今と未来を見据えて解決策を考え出す冷徹さをあわせもった人だった。

起業してすぐに壁にぶつかったけれども、
これまで様々な場で築いてきた「人とのつながり」が後押しとなり、
共感や資金が集まり、軌道に乗っていったという点。
そして、共感の前に理解と納得を得ることが必要という話から、
「人の心を動かす力」が卓越しているのだと感じた。
多くの方からの支援を集められるのは
常に一生懸命に課題を乗り越えようとする彼の姿に皆が胸を打たれるからだろう。

そしてその根底には、陸上に没頭することで育まれた「自己肯定感」があると感じた。
一人で道を切り開いていく「素養」は、学校の授業だけでなく、
習い事でも芸術にふれることでも、ゲームでも「何かに夢中になる経験」によって
身についていくのではないかという思いを新たにした。
また、「お金があれば選択肢が広がるのに」という体験が、
ちょっとやそっとじゃへこたれない「心の強さ」にもつながっているのではないだろうか。

彼が語ってくれた3つのメッセージが、
多くの学生や若手社会人に届けられることを願ってやまない。
posted by メイリー at 23:00| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする