2013年09月02日

食への愛に満ちた陶芸家 file.22

楠原 舞さん。
現在は株式会社FIELD土香という工房で、食器を中心に製作しながら、
陶芸教室の講師としても活躍されている。
栄養士の資格を取ってから京都伝統工芸大学校にて陶芸を学ぶという経歴の持ち主。
彼女がそうした道を歩んだ背景を聴いていきたい。

☆☆☆☆☆

ーー栄養士にならずに陶芸の世界に飛び込んだ経緯をお聴きしてもいいですか。

楠原(敬称略):元々工作が好きで、大学を選ぶときも栄養を学ぶか美大に行くか迷ってたんです。
生活に役立ちそうという観点で栄養を学びました。
就活のとき、普通は給食会社や病院、飲食店を受ける人が多いのですが
私はメーカーの食品開発ばかり、こだわって受けていました。
でもなかなか決まらなくて・・・。
そんなとき両親が「やりたいことをやってみたら」と背中を押してくれて、
食器など「食に関するものづくり」がしたいという思いから、陶芸の勉強をしようと決めました。

ーーご両親の後押しもあったのですね。
京都伝統工芸大学校ではどんな授業を受けたのですか。

楠原:講師は職人で最初から実践でした。
1年目はロクロをまわす基礎と、絵付けの技術も学びました。
2年目には卒業制作で、濃密な時間を過ごしました。
「職人を育てる学校」って全国的にも珍しいですよね。
高校卒業後すぐに入学してくる子から、
卒業後は、より専門性を高めるための学校に通う人や、
私のように工房に就職する人、中には職人に弟子入りする人もいます。

ーー進路は多方面にわたっているのですね。
そんな中FIELD土香に決められたのは?

楠原:偶然が重なったからですね。
就職先を探すとき、最初はどちらかというと受身だったんですが、
就職面談で先生から「自分から動いていかないと何も見つからないよ」と言われて、
はっとさせられました。
そこから「理想の職場」を思い描き始めて、
最近増えている「カフェと陶芸工房・教室が一体化したところ」で働きたいと思ったんです。
求人の検索をしたら、偶然ヒットしたのがFIELD土香。
卒業生がそこで働いているのも安心材料の一つでした。
話を聞くにつれ「まさに私の理想にピッタリ!」と思い、
採用の募集はなかったのですが、実際に職場見学に行ったら、
「採用試験、受けてみる?」と言われて。
ここの試験は異色で、面接はなく、1週間職場で働いて、スタッフと合うかどうかなどを見られるんです。
1週間ドキドキでしたが、スタッフ同士がとても仲良しで
「こんな良い雰囲気なら働きたい!」という気持ちが高まりました。
最後の日に、スタッフの皆さんから働きぶりの感想を聞かされ、
採用が決定したときは嬉しかったですね。

ーーそんな採用試験を受けるのですね。
今2年目ということで、実際に働いてみてどうですか。ギャップはありましたか。

楠原:1年目は研修生として採用されているので、
「できないところがあっても仕方ない」という気持ちがどこかにありました。
でも2年目になって後輩が入ってきて「しっかりしなきゃ。できるところを見せなきゃ」
という気持ちが強くなりました。
ギャップに感じたのは、意外と一からデザインをすることは少なくて、
最初に「型」が決まっているケースが多いことですね。
全国の多種多様な飲食店に、独自の「今城焼」の器を提案販売しているのですが、
「今城焼らしさ」を大事にしつつ、自分の個を出すというところも求められます。
あとは、陶芸というと、1人で黙々と作っているイメージがありますが、
FIELD土香では、色々なお客様が行き来するので、
人とコミュニケーションを取る場面が多いんですよ。

ーーそうなのですね、陶芸のイメージが少し変わりました。
働いていてやりがいを感じるのはどんな瞬間ですか。

楠原:陶器が完成したときに、自分の焼印を押すんですね。
居酒屋や焼肉店に行ったとき、自分の印が押された器で料理が出てきたときに
「色々なお客様が使ってくれてるんだなぁ〜」と実感します。
そんなとき、陶芸の道を選んでよかったと心底思います。

ーーそれは素晴らしいですね。
今のキャリアを選ぶことに影響を与えた出来事ってありますか。

楠原:そうですね・・・好きな仕事をしたいと強く思い続けてきたことでしょうか。
小さい頃から工作だけでなく、料理も好きだし、
服飾関係のデザイナーになりたいという夢もありましたし。
OLで事務をするよりは、大好きなものづくりに関わりたいと思って妥協しなかったことですね。
その中でも、「食」は生活の基本にあるものだから、
「食」に関するものづくりにはこだわっていきたいという気持ちがあります。

ーー将来の夢を聞かせていただけますか。

楠原:京都伝統工芸大学校に入ったときから
「自分でカフェを開いて、自分が作った器で料理を出したい」という夢があります。
今はFIELD土香でしっかり経験を積むことが大事ですけれど。
カフェは閑静なところにあって、常連のお客様がいらしていて、
ゆったりと過ごしてもらえるようなイメージです。

ーーとっても素晴らしい夢ですね。
最後に、「感性や創造性」を磨く方法を教えていただけますか。

楠原:この前「これまでとは違った斬新な器を作る」というお題が出され、
最初は煮詰まっていたのですが、工房の近くの山に行くと、
インスピレーションが湧いてきたんです。
自然の中に行くと、心の余裕も生まれて創造性が高まるのかなぁと思います。
「だから山奥でロクロをまわす陶芸家というイメージがしっくりくるのかぁ」と合点がいきました(笑)

☆☆☆☆☆

ハートウォーミングな彼女の魅力が伝わってくるインタビューだった。
陶芸家への印象ががらっと変わった。
職人でもあり、芸術家でもあり、
小さい頃からのものづくりの経験に裏打ちされた、ものづくりへの熱情が満ち溢れている。

理想どおりの職場とめぐり合えたと言う彼女。
採用の募集がなくても自ら職場見学に行くなど
熱意ある行動が、道を切り開くポイントなのだと感じた。

将来、彼女が開くカフェにぜひ立ち寄りたい。
そんな思いがこみ上げてくる。
posted by メイリー at 23:17| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。