2013年09月15日

文字と宗教への研ぎ澄まされた感受性をもつ未来の弁護士 file.24

品川皓亮さん。
法科大学院に通いながら、「人に出逢う、新たな観光のカタチをつくる」というミッションを掲げた
MeetUs Kyoto」の代表を務める。
「これから勉強する人のための 日本一やさしい法律の教科書」を執筆し、
現在は2冊目の構想を練っている。
多彩なフィールドへの行動力と実現力はどこから湧いてくるのだろうか?

☆☆☆☆☆
ーー「日本一やさしい法律の教科書」、とてもわかりやすい本だと思いました。
法律を学ぼうと思った理由を教えていただけますか。

品川(敬称略):実は高校時代から哲学や神学に興味があって、
「神はいるのか?」、「そもそも『いる』とはどういうことか?」ということを考えたり、
本を読んだりしていました。
ただ、大学で1年間学んでみて、哲学より社会に現実的な影響を与えることのできることを学びたいと思うようになり、たまたま受けた国際法や行政法の授業が面白かったので法学部に転部したんです。
努力した分だけ結果に繋がりやすいというのも専門に選んだ理由の1つです。

ーーその頃から弁護士を目指していらしたんですか。

品川:今は弁護士になりたいと思っていますが、
転部当時はそこまで固く決めておらず、ロースクールに入る直前に
「これで本当によかったのか?」という迷いがよぎりました。
ちょうどそのとき、大学入学直後に読んだ
渡邊 奈々さんの「チェンジメーカー」という本を思い出しました。
利益追求のフィールドでは充たされないニーズを社会起業家が解決していく姿に感銘を受け、
在学中に法律の勉強だけではなく、ビジネスにも挑戦したいという気持ちが高まっていたんです。
僕は頻繁に海外を旅していたんですが、旅の最中に
「自分は死ぬ時にどんな風にありたいか」という問いがいつも頭を巡っていました。
そこで「人生の軸となる四つの価値」が明らかになってきました。
1つは、「日本や世界に大きな規模で貢献すること」
2つ目は「自分だけの道を歩むこと、自分の名前を肩書きにした生き方をすること」
3つ目は「家族を大切にすること」
4つ目は「優しい人でいること」
この4つが重なった自分になれれば、満足して死ねると思ったんです。
これらが重なるところを、今後も模索したいと思っています。

ーー人生で大切なものの重なりを目指すっていいですね。
MeetUs Kyotoを立ち上げたきっかけは何でしたか。

品川:外国人観光客に京都のガイドをしていたのですが、
時折「日本人にとっての宗教」や「文化の違い」などについて話すのが楽しいなと思っていました。
2008年に内閣府の派遣事業でラオスに行ったことをきっかけに、
バックパッカーとして東南アジアをまわりはじめたのですが、
住民の家で料理をふるまっていただいたり、現地の生活にふれるのが楽しかった。
旅の醍醐味は「人との出逢い」だなぁと。
ちょうとビジネス書を読み耽っていたことや、KINGというビジネスコンテストに出たことも、
MeetUs Kyoto立ち上げの後押しになりました。
最初は、激しい葛藤を抱いていました。
ロースクールでは昼夜勉強漬けなのに、本当に両立できるんだろうか?と。
鴨川で1週間悩んで叫んだこともありましたね(笑)
そこで得た教訓は「できるかどうかはやってみないと絶対にわからないし、やってみれば絶対にわかる」ということ。
あとは自分の人生にはまだまだ失敗が足りていないという思いもありました。
死ぬときに「どちらの選択の方が後悔しないか」を考えたら、
たとえ失敗したとしても、「挑戦して失敗した」という貴重な経験がつめる選択肢を選ぶべきだということに気付いたんです。

ーー日本を味わえる地元のお店の開拓はどんな風に進めていかれたのですか。

品川:知り合いに頼んだり、通りすがりでいいお店を見つけたら
「こんにちは〜」とお店の方に声をかけたり、というのが多いですね。
京都の町ってつながっているので、お琴の先生に書道の先生をご紹介いただいたり、
なんてこともよくあります。
MeetUs Kyotoは旅行者、地元の人、運営メンバーの三者に提供できる価値を
最大限にすることを目標にしていますが、
僕らが京都の方々とお付き合いさせていただくことができるのは、
本当にかけがえのない経験だと思っています。
MeetUs Kyotoの法人化を決めていて、
僕が司法修習生になったら、代表をバトンタッチして、
今後は弁護士の知識を活かしつつ、違った関わり方をしていきたいと考えています。

ーー共感してくれる人を増やすために心がけていることってありますか。

品川:誠実でいることです。これはメンバー全員にも何度も伝えているのですが。
リーダーって人格を徹底する必要があると思っています。
優しいリーダーもストイックなリーダーもアリ。
自分の場合、「誠実さ」を徹底することで、よりよいリーダーになりたいと考えています。
誠実でいるためには「想像力」が不可欠で、自分もメンバーもまだまだこれからだなと。
京都一誠実な組織という点では、他に負けたくないですね。

ーー誠実さを追求する姿勢、とても尊敬します。
ところで、品川さんはかなりの読書家だとお聞きしましたが、いつ頃から本が好きなのですか。

品川:小さい頃からですね。僕は4兄弟の末っ子なのですが「美味しんぼ」の漫画が
家にずら〜っとあって、そこから漢字を覚えました(笑)
母親が読み聞かせてくれた「モモ」は大のお気に入りでした。
「窓際のトットちゃん」は何度読んでも感激しますね。
中高生の時も、部活の合間を縫って本を読んでいました。
立花隆さんが「18歳前後に読んだ本でその人が決まる」とおっしゃっていて。
「感動できること」は才能だと思うんです。
自分には音楽や絵画のことはよくわかりませんが、文章を読んで感動することはできる。
一つの言葉、一つの文字にこだわることはできる。
法律も「文字」で飯を食う仕事。
一文字一文字ににこだわり、命を懸けるという面があると思っています。

ーーなるほど。これまでに影響を受けた本、ぜひ知りたいです。

品川:吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」には多大な影響を受けました。
普段から、本の中で感銘を受けた一節に付箋を貼ってメモしているのですが、
この本は付箋だらけになりました。
他には新渡戸稲造の「武士道」、内村鑑三の「後世への最大遺物」、
マハトマ・ガンディーの「獄中からの手紙」、遠藤周作の「沈黙」も心に残っています。
ユダヤ教の教師であるラビが著した「なぜ私だけが苦しむのか」もよかったです。
あとは柳宗悦「南無阿弥陀仏」。
色々な仏教の教えにふれて、僕の中は一番しっくりくるのは浄土宗なのですが、
この本の影響も大きいです。
執行草舟の「生くる」は現代人が見失った生き方の原点を述べていて、とても力強い本でした。
明治から昭和の日本の小説もかなり読みました。島崎藤村や夏目漱石など。
「君たちはどう生きるか」に出てくるコペル君の叔父さんにしろ、
トットちゃんに出てくる小林先生にしろ、子どもがもつ無限の可能性への眼差しに
愛情が満ち溢れているんです。尊敬する師匠です。

ーー錚々たるラインナップですね。紹介していただき、ありがとうございます。
現在興味をもっている分野を教えていただけますか。

品川:いつか取り組みたい分野としては「教育」を考えています。
先ほど述べた四つの価値を満たすのではと思って。
教育は小学校から大学まで自分がその恩恵を一番享受してきたものだし、
元々人に何かを説明したりするのが好きでした。

ーー教育への強い思いをもっていらっしゃるのですね。
先ほど浄土宗のお話があり、お寺によく行かれるともお聞きしていましたが、
お寺に興味をお持ちなのですか。

品川:お寺の本来の仕事は、日本人と仏教をつなげることであると考えているんです。
頻繁に訪れている法然院は、僕にとってまさに仏教とつながれる場所です。
心から信じることができる教えに出逢えたのは幸せだなぁと感じています。
人によって、信じるものが異なっていてもよいと思います。
根源的なところを、偉大な存在に預けることができていれば。
タイやラオスに行ったとき、街中の寺院で皆がお祈りをしているときに「額突く(ぬかづく)」姿を見て、引き込まれてしまった経験があります。
僕も法然院に行くと額突いた状態になるのですが、ある大きなものと自分を対置させて、自分が限りなく小さな存在だと感じる瞬間は、この上なく心地よいんです。
「南無」は、「あなたに帰依します」と意味で、
「南無阿弥陀仏」は、「阿弥陀様に全てをお任せします」という言葉です。
何にもこだわらず、阿弥陀様に身を委ねていられると思うと、とても安心します。
そんな時は、阿弥陀様が自分に語りかけてくださるようにも感じられます。

ーー阿弥陀様が?

品川:そう。きっと「自分の心の声」が自然と聞こえるのでしょうね。
この声は、自分が苦しい状況にあるときほど聞こえてくるように思います。
謙虚で清貧な心をもっているときにこそ、自分と向き合うことができる。
先日法然院に行ったときは、自分を取り巻く木々や葉っぱの一つ一つに感謝の念が湧いてきて、
親がいること、健康でいられること、目標に向かって努力できることへのありがたさを
身に染みて感じる瞬間がありました。
浄土宗を開いた法然上人は、比叡山で修行を積んでいて、当時の世界ではエリート。
高潔で自分自身には厳しかったのに、他人には慈しみの心を常にもっておられた。
先ほど紹介した「南無阿弥陀仏」という本の中にも、
「悲しさは共に悲しむ者がある時、ぬくもりを覚える」という言葉があります。

ーーとてもいい言葉ですね。こうしたものを感じ取れる心の機微・感受性を
どうやって磨かれたのですか。

品川:できるだけ、本当に価値のあるものを見る・聞く・読むことを
心がけていることでしょうか。
ある骨董品の目利きが「ホンモノだけを見ていればわかる」とおっしゃっていて、その通りだなと。
古典は一見つまらないけれど、触れているといつか、その良さがわかるようになると思います。
時の洗礼を受けたものばかりですから。
なので、古典と向き合うことが大切だと考えています。

ーー今後の夢を教えてください。

品川:100年、200年後に読まれているテキストを残すことが夢です。
100年先の人が感動してくれるような古典になる本を。

☆☆☆☆☆

言葉にできない思いが後から後から泉のように湧き出てくるインタビューだった。

「文字」に対する感受性の鋭さ、これまで影響を与えてきた書物への思い入れには、
感嘆せざるを得ない。
「古典」にふれることが、いかに大切なのかを再認識させられた。

何より心を揺さぶられたのは、彼の法然院での「阿弥陀様を通した自己との対話」である。
法然院に行ったこともないのに、額突く姿や一種の神秘性ある情景が、目を閉じると浮かんでくる。
彼の感じ取っている世界は、同い年と思えないくらい広くて深遠であった。

誠実さへの強いこだわり、関係者すべてが満足できるように常に妥協せず高みを目指す姿勢。
力強く謙虚な彼の人柄。
これらはきっと彼の篤い信仰心と深くかかわっていることだろう。

今後、どの分野であっても、誠実なリーダーシップを更に磨き上げ、
多くの人の心をひきつけていくのだと思う。
posted by メイリー at 21:36| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする