2014年02月13日

言葉を越えたものを「感じ取る」プロインタビュアー file.36(後編)

前編はこちら

ーー清水先生の話を聞いて、田中さんが分け隔てなく人と接する方だから、
似た人たちが周囲に集まってくるのかなと思いました。

田中:そうなのでしょうか。そうだといいですね。
自分が「こんな人と近づきたい」と思ったら、その人と似た行動をとっていると、
自然と似た人が集まってくるのだと思います。

ーー人間が惹かれあっていく相性のメカニズムって何なんでしょうね。

田中:卒業論文では量子論を使って、科学と哲学の視点から「インタビュー」を研究しているのですが、
そこででてくる「形態共鳴論」という理論がまさに相性のメカニズムと関連しているかもしれません。
人間って、ミクロの視点でみると10の28乗個の「原子」が集まってできているのですが、
それぞれの人と時間によってその数は異なるんです。
僕は双子なんですが、双子でも違う。

ーー原子が似た人?

田中:はい。原子の数が似ている、つまり「人としての形」が同じような人同士は共鳴しやすいんです。
一目惚れとかよくいいますが、それに近いかもしれません。

インタビューも共鳴現象だと思っています。
相手の周波数に自分を合わせていくものだと。
量子論によると「原子は波であると同時に粒である。」という考え方をするのですが、
これを突き詰めると、人間も外見はあまり関係なくて、
「どういう意識の周波数をもっているか」が大事になってくる。
相手と同じ意識をつくる、つまり周波数を合わせること。
そして、それにより起きる共鳴によって生まれるモノが、インタビューの「発話」なのかなと。
その上で、下調べに何をすべきなのか、対面したときにどう接するのかを考えています。
もちろんこれはあくまで「科学」の切り口の1つですが。

ーーこの人にインタビューしたいというのはありますか。

田中:黒柳徹子さんにいつか…とは思っています。
愛がある方ですよね。そしてあれだけおしゃべりなのが気になります。

ーー今まで100人以上の方をインタビューされてきて、そのたびに感動や衝撃があったと思いますが、
中でも印象に残ったインタビューってありますか。

田中:2012年12月におこなった坂本龍一さんのインタビューでしょうか。
「言葉には意味がない」という考えが確信に変わった瞬間でした。
坂本さんが答えを発した後、沈黙が訪れたときに、目には見えないものをたくさん発していらした。
赤や黄色のような小さな塵が見えるような感覚でした。
言葉がないけれど確実に伝わってくるものがある。
薄々そういうコミュニケーションがあると気づいていたけれど、
そのとき「言葉にできない何か」が自分の中で反響していたんです。

ーー言葉にできない何かを感じ取る鋭敏なセンサーは、どこから生まれてくるのでしょうか。

田中:センサーは誰もがもっていると思います。
人間には顕在意識と潜在意識があって、
感受性が鈍い状態とは、顕在意識が潜在意識を邪魔している状態。
もし僕が感じ取りやすいとしたら、潜在意識の声を聴きやすい状態を意識的につくっているからかなと思います。
例えばキャリアの話で言うと、直感的に「こうしたキャリアを歩みたい」という思いが潜在意識に浮かんでいても、「でもお金を安定的に稼がないと」という顕在意識がブロックをかける。
できるだけ潜在意識の流れに従うことが大切なんだろうなと思います。

ーー講師経験から「教育」への興味をお持ちとお聞きしましたが、
どんなところに興味をもたれているのですか。

田中:日々のコミュニケーションも含めた広い概念として教育をとらえていますが、
当然ですが、「教育の目的」を考えることが大事だと考えています。
1つは、個々人が自分なりの目的を見出し達成していくため。
2つ目は、人類の文明のレベルを高めていくため。
その文明とは、根源的なものを明らかにする「眼鏡」を子供たちに提供すること。
見る目を養う機会をつくることが教育だと考えています。

ーー最期に、田中さんの理想の教育像を教えてください。

田中:子どもが感じる「なぜ?」の先を大人も一緒に掘り下げていく教育ですね。
公式を覚えるのではなく、その原理を理解していく。
例えば「なんでピンクはかわいいのか」という疑問を子どもが抱いたとしたら、
その疑問に付き添うというように。
あとは、科学の知見がもっと教育に取り込まれていくといいなと思っています。
突き詰めて考える習慣を身につけておくと、受験などの節目での人生選択も変わってくると思うんですよね。
「型にはまらない生き方」を選ぶこともできるのだと。

「型」というのは、人間が作り上げたルールやシステム、権威だと思います。
型にとらわれずに生きている人は、2種類ある。
1つは「型は人間が作り上げたものだから意味がない」と思う人たち。
もう1つは「型の意味自体わからない」と破天荒にもみえる天才的な人たち。
前者は一度「型」にはまった経験があって、その型にとらわれなくてもいいのでは?と
突き詰めて考えられる人たちなのだと思います。

☆☆☆☆☆

インタビューさせていただいているのにカウンセリングを受けているような気持にさせられる。
落ち着いた雰囲気で、どんなことを尋ねても受け止めてもらえるような安心感が漂う時間だった。
インタビュー後も教育についてお話をしたが、
私の興味や専門分野と絡めて話してくださった。

彼は、誰かのインタビューをする前に相手の下調べを丹念におこない、
その人の専門分野の本を読み漁るとのこと。
「どんな人からも学ぶ」姿勢、そしてプロ意識の高さには、尊敬の念を抱くばかりである。

分け隔てなく自然体で、一人一人と真剣に向き合う。
その姿勢は興味があればすぐに取り組んでいける環境や、
幼稚園の教育、能の経験をベースとしているのではないだろうか。
そして、日々あらゆる刺激や影響を受け続けている彼の感受性は、
インタビューで対峙する「人」の奥深くに眠るものをそっと解き放っていく。
そんな気がした。

彼にお会いして、インタビューの道を切り開きたいという想いが
私の中でふつふつと沸き起こっている。
彼が発した「言葉にできない何か」に、確実に私は影響を受けた。
posted by メイリー at 23:49| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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