2014年03月12日

ワクワクの種を蒔く未来のコミュニティーデザイナー file.38

農業、教育、地域、環境。
これらを軸にコミュニティデザインに携わるという夢へと向かう大学生の大河原誠也さん。
京都大学の面白い友人から友人へと、ぬいぐるみをバトンに
ブログを執筆してもらう「京大わらしべ」の火付け役であり、
近くの学生が自分の等身大の想いを綴っている。
京大わらしべは京都わらしべへと進化し、ファンを増やしていく一方である。
就職活動真っ盛りで、色んな業種・職種の人に仕事観を尋ねる旅にでている彼に、
どんな想いで人をつないできたのかをお聴きしようと思った。

☆☆☆☆☆

ーー京大わらしべの活動を始めたきっかけは何でしたか。

大河原(以下敬称略):未知の世界や価値観を知りたいという思いがあったんです。
大学入学時も法学部に属しながら、ずっと興味があった農業や環境、地域作りを学ぶということに挑戦していました。
京大附属図書館で様々な学生が、それぞれ熱心に研究している背中をたくさん見ていると、
自分が経験できることには限りがあるけれど、他の人とつながりをつくっていけば、
新たな世界を覗かせてもらえるかも?と思ったんです。
わらしべの最初は自分の友人にぬいぐるみのバトンを託しましたが、
やがてバトンが知らない人たちに渡って、コミュニティーの枠を越えていく。
参加してくれた執筆者たちからは『自分の考えを振り返る良い機会になった』という声をいただいています。
ブログはあくまで出逢いや気付きのきっかけ。
わらしべ執筆者や読者が実際につながる機会が創れればと思い、
2013年の年末にはわらしべ交流会を開き、約20名の方々が集まってくれました。
海外のパーティーみたいに、初対面の人たちが集まる場って、すごく価値があると思っているんです。
2014年は輪を京大から京都に広げています。
京都にはソーシャルな方々やユニークな中小企業が多いので、その魅力をわらしべを発展させて、共感する学生と企業を結ぶプラットフォームにもなればいいなぁと思っています。

ーー未知の世界にふれるのが本当に好きなのが伝わってきます。
色々お聴きしたいポイントはあるのですが、
まずは農業や地域などにずっと興味をもっておられる理由をお聞かせいただけますか。

大河原:母親がよく地域の公民館などで絵本の読み聞かせをしていて、
地域とのつながりを意識することが多かったんです。
埼玉の自然あふれる地域で育ち、祖母が畑を持っていたので
自然は身近な存在で、虫を追いかけて幼少期を過ごしました。
無人島で過ごすプログラムにも参加したことがあって、自然への興味は常にあったと思います。

ーー自然に囲まれて過ごした幼少期だったのですね。
農業や地域に関わる活動は大学時代でも何かされていましたか。

大河原:オーストラリアとインドネシアに一人旅に行きました。
WWOOFというホストファミリーを探せるネットワークに加入し、見つけ出したオーストラリアの滞在先。
10軒ほどの家と果樹園、そして一面の森が広がるエコヴィレッジで20日間過ごしました。
ホストファミリー宅で家族の一員として働くことで、宿代が無料で宿泊させてもらう仕組みなんです!
地域の暮らしに入り込み、ホストファミリーの哲学に触れました!

ーーなんて素晴らしい経験!他に今の自分に影響を与えた経験ってありますか。

大河原:大学2年生の頃にサッカーサークルのキャプテンを務めたことは貴重な経験でした。
高校時代もサッカーをしていたのですが、その当時はレギュラー外という立場だったこともあり、
キャプテンになってからも、自分とは立場の異なるメンバーそれぞれの視点を意識していたんです。
サークルには「サッカーをやりたい!」だけでなく、それぞれが色んな目標をもって加入してくるので、
個々の想いが少しでも実現するような環境整備が僕の仕事だと思っていたのです。
そこで、サークル全体を俯瞰的に見ることを意識し、調整型リーダーシップを身につけていきました。
元々、「他者から見られる自分」を気にするタイプなんです。
小学生の時、学校で友達とうまくいかないことがあって、
かわりに勉強に打ち込んで認めてもらいたい!と思っていた。
認めてもらうには?と考えるうちに、自分を客観視する「メタ認知力」も一緒に高まっていった気がします。

ーー俯瞰的に見る力は小さい頃から身につけてこられていたのですね。
今、取り組んでいることについても教えていただけますか。

大河原:現在、就職活動中で、多様な生き方や仕事観にふれるために
できるだけ多くの社会人に会うことを目標に、京都と東京を行き来しています。
その傍ら、取り組んでいるものが2つあります。
1つは「京果会館」のリノベーションプロジェクトという、
「食」・「デザイン」・「地域」が掛け合わさった新たな場を築いていくプロセスに学生チームとして携わっています。
JR丹波口にあるのですが、地元の商店街の人々や地域にお住まいの方々のニーズを聞き取り、反映させていければ、
food laboratoryへと生まれ変わるだろうと信じてわくわくしています。
京果会館は2014年の春〜夏にオープンする予定です。

ーー大河原さんは「食」の問題にも課題意識をもっておられるのですね。
「食」にフォーカスされた理由は?

大河原:想像力の欠如を感じたことがきっかけです。
今の子どもたちは自分が口にするものが、どんな風にできていくかを知らなくなってきていることが多いいと聞きます。
食って生きることに直結したものなのに…。
あと、スウェーデンに半年間留学していたのですが、スウェーデンではベジタリアンに多く会いました。
中には食肉加工のプロセスに疑問をもち、ベジタリアンを選ぶケースもあるんです。

ーー食の価値観は多様ですが、食べ物の製造プロセスを知り、主体的に何を食べるかを選択することは大事ですよね。
では、夢中になっている2つ目の活動について聞かせていただけますか。

大河原:2つ目は学生団体「マチカドsozo館」の活動を実行していくこと。
今は仲間を集めて団体の理念を叩き上げている最中なのですが、すでに3回ワークショップを開催しました。
メインテーマは「出会いを通じた遊びと学びの場づくり」を地域の子どもたちに提供すること。
「放課後NPOアフタースクール」の活動に近いことを実現できたらと思っています。
マチカドsozo館では、京都の職人や住民の方々との関わり合いを通じてつながりを感じられるプログラムを提供したいと思っています。
例えば、年配の方々が子どもと接して互いに学び合えば、年配の方々の生きがいづくりにもなるのではないかと。
地域の人たちがつながる場を上手くデザインできれば、自然と教育の場になっていくのだと思っています。

ーー地域の教育、色々なアイディアがふくらんでいきますね。
大河原さんはどんな教育をつくっていきたいと思っていらっしゃるのですか。

大河原:子どもの頃からワクワクの種(=原体験)に偶然出逢えるような教育ですね。
今の家庭と学校が提供する「種」はどうしても限られてしまっている。
あとは和田中の前校長を務めた藤原先生のいう「情報編集力」を育てられる教育を大事にしたいと思っています。
これまで大学受験までは、常に正解を追い求めてきましたが、
留学した矢先、他の留学生とディスカッションができなくて愕然としたことがあったんです。
自分なりの意見をちゃんともってこれたのだろうかと自問自答しましたね。
語学力よりも「自分はどう思うか」と考える習慣の欠如を痛感しました。

ーー大河原さんのお話を伺っていると「つなげること」がキーワードになっていると感じました。
異なる価値観をもった人同士をつなげていくためには何が必要だと思いますか。

大河原:「あの人の言うことならちょっと聞いてみようかな。」と思ってもらえる人間性ですかね。
どんな価値観をもっていても、その中身を「想像」して、異なる立場の人に理解してもらえるものを創る。
つまり共通言語となるものを「創造」していく。
imaginationとcreativityの両方があれば、人と人をつないでいけると考えていますし、
今後常に磨いていきたいと思っています。

ーー今後のビジョンを教えてください。
環境、教育、街づくりを舞台に社会にインパクトを与えられるリーダーになることです!
あとは少しずれるかもしれませんが、人に道を尋ねられるような「心の余裕」は持っていたいです。
以前、ある人から「君は『できるだけ遠くまで飛ぼうとする綿毛』みたい」と言われたことがあり、
セルフイメージに近くて、しっくりきたんです。
どんなに忙しくなっても、綿毛のように穏やかな状態を保っていたいなと思います。

☆☆☆☆☆

幅広いフィールドで、波動の一滴となり、輪を生み出していく大河原さん。
新しいものを生み出すエネルギーを秘めながら、彼が纏う空気はとても穏やかで、落ち着いていた。

自然に囲まれ、地域の中でのびのびと育ってきた彼が
今は京都の「食」や「教育」、「地域活性化」に向けて日々動き続けている。
彼自身が「ワクワクの種」を育んできたからこそ、綿毛のように種を蒔いていく力をもっているのだろう。

就職活動では業種・職種をとわず色々な社会人の仕事観にふれているとのこと。
彼は自分なりのフィールドを見つけては、持ち前の巻き込み力で
人をつなげ、ワクワクが伝播するサードプレイスをデザインしていくことだろう。
これからも彼の活動をずっと見守りたい。そう思わずにいられないインタビューだった。
posted by メイリー at 22:33| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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