2014年03月23日

人の心への興味と思いやりにあふれる妊活心理カウンセラー file.39

横浜・関内の心理カウンセリングサロン『LIB Laboratory』を開いている今井さいこさん。
2013年7月から、妊娠したいと思っている女性や、妊娠中の女性が
悩みや不安を共有し、役立つ情報を得ることができる
妊活WOMANというSNSをオープンさせた。
ストレスのない「楽しい妊活」を探してもらえるように…。
そんな思いがこめられた「妊活CAFE」には、20代後半から40代前半の女性たちが集う。
ご自身の妊活の経験が、妊活WOMANを始めるきっかけになったという言う彼女。
今井さんのブログにずっと共感と憧れを抱いていた私は、
彼女の活動の背景にあるものをお聴きしたくてたまらなくなった。

☆☆☆☆☆

ーー心理カウンセリングサロンや妊活CAFEを開くなどフリーランスになられる前は
どんな仕事をなさっていたのですか?

今井(以下敬称略):新卒で入社した会社はベンチャー企業で、多忙な日々を送っていました。
その頃、営業をする中で、人と関わることが好きだと気づいたんです。
大学時代に心理学を専攻しており、人の心に元々興味がありましたが、
心理カウンセラーを目指したのは社会人になってからです。
カウンセラー養成学校に通い、資格を取得したのを機にリフレクソロジーの会社の人事に転職しました。
社会人4年目の出来事です。
ベンチャー時代に新卒採用にも携わっていたので、営業から人事に職種が変わることに抵抗はなかったですね。

ーーリフレクソロジーという癒しの業界を選ばれたのは何か理由があるのですか。

今井:「人を癒すビジネス」の原理を肌で知りたかったというのが理由の1つです。
最初はカウンセリングルームの転職も考えていたのですが、ほどよい規模のカウンセリングの会社は少なくて。
実際に入社してみて、「企業を永続させるために利益を出すこと」と
「お客様のために本当に必要な癒しを提供すること」とのバランスをとるのが
いかに難しく重要なことなのかを学びました。
癒しのビジネスに関わる人たちはつい目の前のお客様の視点に立ってしまいがちなのですが、
「仕事」なので、癒しの提供と利益を出すという両方の視点が必要なんですよ。
その後、女性のためのカウンセラーになりたいという思いで独立しました。
結婚を機に一時的に会社員に戻ったこともありましたが、
ネットの掲示板で相談にのるカウンセラーには登録していて、カウンセリング経験を積んでいきました。

ーー心理カウンセリングの中でも、妊活を専門とされるようになったきっかけについて
教えていただけますか。

今井:私自身、妊活をしていく中で、妊娠・出産の問題って
旦那さんとの関係性にもよるし、家族にこそ話しづらいテーマなのかなと思ったんです。
私は元々親や姉弟にもよく相談するのですが、
「子どもがなかなかできない」ともし親に相談したら、
親に色々な心配をさせてしまうのでは…と考えたり、気恥ずかしさを感じたりして躊躇っていました。
誰にも相談できないジレンマを抱えている女性は他にもたくさんいるだろうし、
カウンセリングをうければ前向きに妊活に取り組めるのではないか?
そう思って妊活WOMANの活動を始めたんです。
また、似た境遇の人たちのコミュニティーを作ることで
私自身の悩みも共有できて、役立つ情報交換もできて一石二鳥!というよこしまな気持ちも多少ありましたね(笑)
妊活CAFEでは、必ずおしゃべりタイムを設けているので、
互いの近況や悩みをざっくばらんに話します。
私はファシリテーションをしつつも悩みを話して、参加者からアドバイスをもらうこともあります。
参加者の方々から学ぶものも大きいですね。

ーー「流産を経験した方の会」や「布ナプキン講座」など
会のコンセプトがが斬新だなと思っていたのですが、何か理由があるのですか?

今井:最初は「多くの人に来てもらわなきゃ。」という思いで、
参加の敷居を下げるような一般的なタイトルにしていたのですが、
もっとターゲットを絞った会を色々と開いた方が、
参加者のニーズによりいっそう寄り添えるのではないかと思ったのです。
「流産を経験した方だけの会」も、流産経験のある妊活WOMANの会員さんの声で、開催することになりました。
参加者からは「仲のいい友達にもここまで本音で話せない。
このコミュニティーがあるからこそ、色々な経験や価値観をもった人と話せて心が軽くなる。」
といった感想をいただくことが多く、とても嬉しく思っています。
妊活WOMANには、妊娠したいという方はもちろん、それ以外の悩みをもつ方がおられます。
「いつかは子育てを…と思い描いていたけれど、
年齢のリミットも迫ってきているのに、今は子育てのイメージをもてない」という方や、
「旦那は子どもがほしいというけれど、本当は自分は子供がほしいのかわからない」という方、
「時短勤務になると昇進が難しくなるから役職につくまで出産を延ばしたい」という方。
お子さんがほしいと思う時期や度合いは様々ですし、
夫婦間でどう理解し合い折り合いをつけていくかというのも難しいなぁと日々感じています。

ーーブログの中で今井さんご自身も、子宮外妊娠の経験がおありで、
妊娠の問題に向き合う人たちを救いたいという思いにつながったとありましたが、
もう少し詳しくお聞かせいただいてもいいですか。

今井:実は、子どもがほしくてたまらなくて、
毎月「今月も妊娠できなかった…」と旦那に対して申し訳なく感じていた時期があったんです。
だから子宮外妊娠とわかる前に、検査薬で妊娠とわかったときは本当に嬉しくて。
でも、その後かなりの出血があり、「これは通常の妊娠ではなさそう」と思い愕然としました。
病院に行って子宮外妊娠と診断されるまでの数週間は、自分の身体に何が起こっているんだろうと不安が募る一方。
一番つらかったのは、手術後に麻酔で髄液が漏れ1週間起き上がれなかったことでした。
激しい頭痛と吐き気に襲われて…。
これまで妊娠できるかどうか?ばかり気にしていましたが、「健康でいること」が何より大事だと思い始めたのです。
妊娠も出産も本来命がけ。自分が健康でなければ妊娠期間も健康にすごせない。
妊活をするには健康な体づくりと妊娠に対する知識がないと、
もし妊娠できても母子ともに健康な出産を実現できないのでは?と。
妊娠についての勉強を始めてからは、落ち込むことが減り、
「生理がきても、これは次の排卵の準備なんだ。
今からこの栄養素が大事だからちゃんと摂ろう」という風に前向きに考えられるようになってきました。
そうして心に余裕ができてからは、「旦那と二人の生活もありかな」と、選択肢が増えたのもよかったです。
今思うと、私にとって必要な経験だったのかもしれません。
新しい自分の人生を見つけられましたし、「妊活」を仕事にする契機にもなったので。

ーー「健康あっての妊活」なのですね。
次は、学生時代についてお話を伺えたらと思います。
心理学を専攻していたとのことですが、心理学にはいつから興味をもたれていたのですか。

今井:中学3年のときに神戸連続児童殺傷事件があり、裁判記録を母が買ってきたことがありました。
その内容があまりにもショッキングで…。
不思議だったのは、加害者が加害者の母親から
「まわりの人はみんな野菜だと思いなさい、そうしたら緊張しないよ」
と言われたので、人を野菜だと思うようになったという記述。
彼には弟がいて、同じしつけを受けたのに、なぜ彼だけがこんな罪を犯すようになってしまったのだろう?と。
これがきっかけで、犯罪者の心理や、犯行に至る経緯が知りたくて
FBI捜査官による殺人者の心理を追った実録本などを読むようになりました。
虐待というテーマにひかれるようになったのは、
犯罪者の成育歴を見ると、幼児期に虐待を受けているケースが多く、
「世の中の虐待を減らせば犯罪自体の減少につながるのでは?」と思ったからです。
大学では虐待の研究にフォーカスし、虐待の被害者・加害者の自助グループに参加させていただいたこともありました。
それまでは、「虐待は当然親が悪い」と考えていましたが、親(虐待した側)も実は悩んでいることに気付いたのです。
親自身も過去に虐待を受けていて子どもに愛情をどう注げばいいかわからない…。
これは心理学という一分野からのアプローチだけでは解決できない根深い問題だと
圧倒されたのを覚えています。
虐待の被害者・加害者の心の闇を解決して終わりではないのだと。

ーー犯罪心理学から虐待の問題へとテーマが変遷していったのですね。
小中高の時期に、今の自分に影響を与えた人はおられますか。

今井:母親の影響が大きいと思います。
女性向けカウンセラーを目指す前には、親の課題を解決するために
親子関係専門のカウンセラーなりたいと思っていたんです。
なぜ親子の問題に興味があるのだろう?と、きっかけをよくよく探ると、
自分の母親への思いに行きついたんです。
弟が小学生のときに悪気なくいたずらを繰り返していたことがあり、
学校の先生の提案により、母が児童相談所に相談に行ったことがありました。
すると、相談所の方が母のことをひどく責めたんです。
「お母さんの息子さんへの愛情が足りないから、息子さんは寂しくていたずらをするんです。
もっと息子さんとの時間を増やしてください」と。
母は私と姉、弟を育てるために毎日必死に働いて、たっぷり愛情を注いでいた。
それなのに、なぜ母がこんなに責められるんだろう?
幼いながらに私の目から涙があふれたのを今でも覚えています。
親子の問題に目がいったのも、きっと「あの日の母を助けたい」という気持ちが根っこにあるのでしょうね。
カウンセラーを目指す原点だと思います。
今でも、あの時の相談員が「お母さんも頑張ってますね」と一言声を掛けてくれていたら、と思うことがあります。

ーーそんな思いがあったのですね…。
フリーランスのカウンセラーになられて、ライフスタイルなどに変化はありましたか。

今井:自分の生活を自分で組み立てられるというのは良い変化でしたね。
本当にやりたいことをやれているという実感があります。
結婚直後は、旦那より先に出社して、帰宅するのも遅くて料理を全く作れない週があり、
モヤモヤがたまっていました。
でも、フリーになってからは出かける旦那を「いってらっしゃい」と見送ることができる。
自分のペースでやりたいことを実現しようと日々動けるのでいいことづくしですね!
仕事で悩んだときには、旦那や他のフリーランスの仲間に相談できますし。

ーーフリーランスの働き方が合っているのですね。
フリーランスを目指す方へのアドバイスがあればぜひ聞かせてください。

今井;会社員だから享受できるメリット、例えば安定した給与や育休などの福利厚生の制度を捨ててでも
フリーで実現したいものがあるのかどうかが大事だと思っています。
もし、実現したい夢があればぜひ突き進んでほしいですね。
突き進む過程も楽しいし、実現できたときの喜びは会社員時代では味わえない大きさなので。
あとは、家族を味方にすることも大切。
応援してもらえると心強いですしね。

ーー最期に、今後の目標を教えていただけますか。

今井:直近の目標は、全国に広がる妊活WOMANの会員さんが各地でリアルに参加できるイベントなどを開催していくことです。
現在、妊活CAFEは横浜や東京開催が中心なので、地方の会員さんが直接交流しあえる場を、
全国の友人のつながりを使いながら築いていきたいと思っています。
また、妊活WOMANを経てお母さんになった会員さんが今度は育児の悩みを共有していけるようなコミュニティーもつくっていけたら思ってます。

☆☆☆☆☆

妊娠・出産というセンシティブなテーマについて、
本音で語り合える場がほしいと思う人は多いのではないだろうか。
どんな価値観でも公平に受け止め、人の心にしっかりと寄り添ってくれる。
今井さんに一度お会いしただけで、そんな安心感に包まれた。

人に寄り添う力を下支えするのは、
犯罪心理学や虐待の問題を切り口にした「人の心への深い興味」と、
小さい頃から母親の気持ちを慮る思いやりの心ではないだろうか。

フリーランスの道を選び、自分らしく、夢に向かって挑戦していく彼女の姿に、多くの女性が引き寄せられ、
妊娠・出産、いずれは子育てというテーマで輪が広がり深まっていくことだろう。
妊活CAFEに参加して、彼女の輝く姿を生で見たい。そう思わずにはいられない。
posted by メイリー at 13:49| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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