2014年07月06日

若者に光を照らしていく知の伝道師 file.45(前編)

20140620出口様インタビューアップ用.JPG

ライフネット生命保険株式会社 にて
代表取締役会長兼CEOを務める出口治明さん
2006年、そろそろ還暦という年齢で、
現在代表取締役社長兼COOを務める岩瀬大輔さんとともに
74年ぶりの独立系の生命保険会社、ライフネット生命保険を立ち上げた。
「保険業界の変革者」という経営者としてはもちろんのこと、
無類の読書家、高い博識の歴史の伝道師としても名高い出口さん。
訪れた世界の都市は1200を超え、読んだ歴史書は5000冊以上と言う。

『思考軸をつくれ』や『仕事に効く 教養としての「世界史」』、
『ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊 』など
彼の著書や世界史の講義からにじみ出る博学多才さと、人を育てることへの情熱に、
尊敬の念が募る一方だった。
彼の今の生き方や、確固たる信念の背景にあるものをお聴きしたく、
ライフネット生命のビルに伺った。

☆☆☆☆☆

ーー出口さんはどのような子ども時代を過ごされたのですか。

出口治明さん(以下敬称略):家の前は山だったものですから、
トンボやセミ、カブトムシやクワガタ、蝶を捕まえたり
フナを釣ったり、キノコを採ったりして過ごしていましたね。
今でも夏になるとこのビルの前の立木に止まっているセミを、ついつい素手で捕まえてしまいます。
生き物が好きでしたね。
親は放任主義で「勉強しなさい」とは一度も言われたことがなかったですね。

ーー出口さんのことを信頼していらしたんでしょうね。
ずっと自由にさせてくれていたんですか。

出口:まぁ、親が何か言っても僕は聞かなかったでしょうね。
好き嫌いが激しい子どもだったので困ってたんじゃないですかね。
高校時代に非常につまらない授業があって、
授業中先生に背中を向けて好きな本を読んでいたら、親が学校に呼ばれていましたね。
「いい年になってアホなことはしないで」とはさすがに言われましたけれど。
だって教科書を5分も読めば理解できる内容を延々と話すんだったら、
本を読んだ方が有益ですよね。

ーー先生に背中を向けて本を読むというのは、大胆ですね。
小中時代は図書館の本をほとんど読破されたと伺いましたが、
「10代のうちに読んでおいてよかった」本ってありますか。

出口:小中高はよく図書館に通っていたのですが、
一番夢中になったのは、高校時代では『チボー家の人々』です。
この本を読んで「希望は全て若者にある。人間は次の世代のために生きるのだ」ということを学んだような気がしています。

ーー学生時代に、印象に残っている経験や出来事を教えていただけますか。

出口:高校時代は山岳部に入っていて、毎週のように山登りをしていました。
頂上の見晴らしのいい景色を見たい一心で山に登った。
そう言えば、『山のむこうは青い海だった』という物語をよく覚えています。
三重県の伊賀盆地に住んでいたので、山の頂上から世界が広がっているのを眺めるのは
非常に気持ちがよかった。
今も母校の校歌の3番はそらで言えるんです。
(以下の歌詞をノートに書き始める)

「四方を囲める山々も
丘に登れば 低く見ゆ
我らの望み 山々を越えてあふれて 外に出ん」

ーー外の世界を見たいという気持ちが強いようにお見受けしますが、
その好奇心はどこからわいてくるのでしょう。

出口:これは生まれつきでしょうね。
好奇心の遺伝子が強いのだと思います。
4つ下の弟は本はそんなに好きではなくテレビが大好きなのに対し、
僕はテレビはほとんど見ず、本ばかり読んでいましたからね。
同じ環境で育っても真逆だから遺伝子でしょうね。

ーーそんなに真逆なのですね。好きな教科は何でしたか?

出口:数学が好きでした。文系でしたが数Vまで勉強していました。
答えがスパッと出るのが気持ちがいい。
数列ってとても美しいじゃないですか。
スマートに考えたら、最短で惚れ惚れするようなキレイな解を導き出せるのが好きでしたね。

ーーそれが『早く正しく決める力』に書かれていた
「国語ではなく数学で考えよ」という言葉にもつながっているのですね。

出口:えぇ。「数字・ファクト・ロジックが重要」と言っていますが、
この3つは誰でも理解できるし、腹落ち感がある。

ーー大学で法学部を選ばれた理由は?

出口:一番幅広く学べそうな学部だと思って決めました。
文学部は特別な才能がいるようなイメージだったので。
当時、将来の夢が特にあったわけでもありませんでした。
両親から国公立しかダメと言われていましたし、
家から近くて法学部があるのは京大かなという感じでした。
親も先生も特に入試のアドバイスはしてくれなかったので、
入学願書も京大にしか出しませんでした。
合格したからよかったんですけれどね。
1968年に大学に入ってからは、全共闘の時代で校舎が封鎖されていたので、
下宿で本をひたすら読んでは友人と本について議論する日々でした。
1回生の夏には北海道を一人旅しました。
当時はチケット代を除いたら2万円程度で1カ月を過ごせましたね。
お寺や教会の軒下で野宿して。
山岳部では寝袋で寝るのが普通だったので、野宿は平気でした。

ーーサバイバルですね。
「人間は人・旅・本によって学ぶ」とおっしゃるように、
大学時代に多くの旅をされたのですね。

出口:「人間は、人に会い、本を読み、世界を旅すること以外に賢くなる方法はない」と言っていますが、
実は、僕の場合、本からの学びが一番大きなウェイトを占めている気がします。
5割以上でしょうか。
もちろん、これまで70ヶ国以上、1200ぐらいの都市を旅してきましたし、
社会人になってからも仕事柄、毎晩のようにたくさんの人に会ってきました。
でも、圧倒的に面白くて、学びをもたらしたのは本。
読めば読むほど「なるほど」と思うことが増えてくるのです。

(中編につづく)
posted by メイリー at 01:03| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする