2014年07月10日

若者に光を照らしていく知の伝道師 file.45(後編)

20140620出口様インタビューアップ用.JPG
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ーー出口さんご自身が子育てをされる中で、心がけておられた点ってありましたか。

出口:特にこれを…というのはないです。
親が子どもにできることって、究極的には「名前をつけること」くらいです。
親がどんなに一所懸命育てても、子どものためにできることは少ない。
放任主義でいたために、子育てで困ったことはあまりありません。
子どもには生きる力が本来備わっているのですから、
人様に迷惑にならないよう、挨拶や礼儀など最小限のルールを教えておけば、
あとはその子の生きる力を信じるのみ。
子どもが親とは別人格であることを認めずに「こんな子に育てたい」と枠にはめようとするから
親子間に軋轢が生まれるのではないかと思っています。
これは夫婦やパートナーとの関係にもあてはまりますね。

ーー夫婦円満を保つ上でも、生物学の知見が役立ちそうですね。

出口:パートナーを選ぶ基準は、「一緒にいて面白いと感じられるかどうか」。
これで十分だと僕は思います。
生物学の視点に立つと、パートナーと一緒に添い遂げることがいかにすごいことかが分かります。
男性は自分の遺伝子をできるだけ多く残したいという本能がある。
一方、女性は自分の子どもを守ってもらうために徹底的に男性を選ぶ。
でも社会的混乱がおこらないように男女が上手に暮らすために、
結婚という法制度が生まれ、適用されてきた。
フランスのPACSもその制度です。
あくまで土台にあるのは生物学的なもの。
その上に法制度が乗っているのですね。
生物学的な男女の差異を理解した上で、
法制度や理性でどうカップルの関係を築いていくかが大事だと思います。

ーー教育も子育ても夫婦関係も、動物のことをよく知っているかが鍵になるのでしょうか。

出口:どんな課題であれ、グローバルに考えて、
生物学・大脳生理学などの知見を政策に取り入れることは不可欠です。
「日本の問題は日本の考えで解決しよう」という「出羽の守」などの偏狭な風潮がありますが、
日本は、岩倉使節団が海を渡って世界中のいいところを取り入れようとした謙虚さを
取り戻してほしいと思っています。

ーー人材育成においても、こうした知見を取り入れていらっしゃるのですね。

出口:例えば、部下の育て方では「ロサダの法則」をベースにしています。
「3回褒めて1回叱る」という法則で、上手くいっている組織なら、
6回褒めて1回叱るというものです。
「褒めて育てよ。でも時には叱ることも必要」と言う人は多いですが、
漠然としているので「じゃあ、どの程度やればいいの?」と実践が難しくなってしまう。
数字で示せば一目瞭然です。

ーー最後に、「感性を育てる」ために必要不可欠なものは何か、教えていただけますか。

出口:「人・本・旅にふれる」これに尽きます。
ウェイトは人によって様々でいいのです。
教育によって感性のセンサーを磨くことができますが、
自分のアタマで考え、自分の言葉で自分の意見を述べさせる、という教育の原点を忘れないことです。
答えを簡単に教えずに「相手にとことん考えさせること」で
思考力は研ぎ澄まされていきます。
部下の相談も漠然とした内容ならあえて突き返していました。
なぜなら部下の方が僕よりも担当企業については詳しいので、
「君がまず考え抜いた策をいくつか練って、もってきてくれたら、
どれがいいのか一緒に考えることはできるが、
考え抜けるのは君しかいないんだ」と。

☆☆☆☆☆

冷静なロジカルさと、ハートフルな愛情を持ち合わせた方。
そんな印象が強まった。
人として高みを目指し、歩まれてきた方は、
どんな場面でも、オープンマインドで接してくださるのだと、改めて感じるインタビューだった。

経営者としても、歴史に精通した知の巨人としても、尊敬してやまない出口さん。
無類の読書家とはいえ、「5割以上は本から学んだ」という言葉には驚きを隠せない。

生まれながらの好奇心旺盛さと、自然の中で育まれていった探求心。
人間に対する深い洞察と、人間の心の機微を感じ取る感受性。
それらが、彼の表情や言葉ににじみ出ていて、目が離せなくなった。

学び取った知見を教育や人材育成に取り入れ、若者に光を照らしていく「知の伝道師」は
まさに彼のことではないだろうか。

インタビュー後に出口さんが語った言葉が今もキラキラと光と放っている。
「面白いかどうかが全て」
「会いたいと思ったらすぐに会いにいかなきゃ。思った瞬間が一番会いたいでしょう?」

恐れずにインタビュアーの道を突き進んでいこう。
私の心に火が点いた。
posted by メイリー at 00:04| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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