2014年08月31日

常識を木っ端微塵にするシステムエンジニア file.50

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齋藤俊輔さん。
東京でSEやSEの採用・人材育成に関わった後、
医学部受験を目指し稚内に帰郷。
現在は札幌で医療システムの構築に携わっている。

東京ではRosebud Mouthというバンドでヴォーカル・サックスを務めていた。
8年前に会ったときから、多趣味・多才、そして好奇心の塊だった彼。
科学、音楽、歴史、映画、神話など、興味の範囲は広がるばかりである。
一方で、人の相談にとことん真摯に付き合ってくれる優しさを持ち合わせている。

常識の枠なんて取っ払ってしまうような独特の世界観が
どのように醸成されたのか、インタビューを申し込んだ。
(※普段Jokeさんとお呼びしているのでその名称を以下では使います。)

☆☆☆☆☆

ーー今日は色々Jokeさんにお聞きしたいことがあるんですが、
過去のことから色々お話きかせてくださいね。

Jokeさん(以下敬称略):99%オープンに話せるよ。
地球や宇宙に比べたらちっぽけな自分のことなんて隠すところはないからね。

ーーその発想、変わっているって言われません?

Joke:そうだね。先日、自動車免許を取りに教習所に通っていたんだけど、
初対面の人から口々に「変わってますね」と言われた。
1,2分しか話していないのに。
俺自身は変わっていたいと思っているわけではなく自然体だけど。
俺が逆にいわゆる普通の人に不思議だと感じることが多い。
「文句があるのに言わない人」とか「全く納得していないのに渋々同意している人」とか。

ーー波風を立てたくない、自分が傷つきたくないという人は
そうした態度をとるのかもしれませんね。
Jokeさんは誰にでも正直に接すると聞いていますが。

Joke:正直に言いすぎて波風を立ててばかりだけど、後悔したことは一度もないなぁ。
間違っていると思ったら上司にも指摘するし、友人に対してもきちんと叱責することもある。
それが誠実な対応だと思うから。

ーーそんなJokeさんはどんな子ども時代を過ごしたのでしょう。

Joke:小さい頃から変わっているとずっと言われ続けているね。
20歳頃に、母親から
「実はあんたのこと、異常者なのか社会に適応できる人間なのか分からなかったことがある」
とカミングアウトされたくらい。
まぁ、意外にちゃんと就職して、真っ当に生きているんだけど(笑)
小中高と、全校集会などの場でひたすら喋り続けていて、
先生から追い出されたことも多いし、
小学校のときは、自席に座っていられないから、教卓の横で勉強させられていた。
やんちゃで手に負えない子だったけれど、今思うとたぶんADHDだったんじゃないかと思う。

ーー強烈なカミングアウトですね。当時興味があったものは?

Joke:トランシーバーに憧れたなぁ。今もほしいし。
秘密基地を作るのに夢中だったね。
でも高校の中盤まで興味をもてるものはほとんどなかった。
稚内ってほんとに田舎。
興味をかきたててくれる授業や、人間的魅力のある先生にはほとんど出会えなかった。
でも、科学への興味は自然と湧いていた。
「地面以外歩けないのはなぜ?」
「光ってなぜ?」
物心ついたときから、そんな疑問ばかり持っていて、解明したくなるんだよね。
エジソンの伝記に「泥団子を2つくっつけると、1+1=1になる」という記述があり、
「たしかに!」とすごく納得したんだけど、
大人は「1+1=2」という常識から逸脱することに対して否定的であることが多く、
「なんでそんなに枠にはめたがるんだろう?」と感じる。
常識なんて木っ端微塵でいいんだと思う。

ーー木っ端微塵ですか。

Joke:そうそう。ダークマター(暗黒物質)の研究も、
人間が目で観測できるわけではないけれど、
「見えていない=存在しない」とはいえないということにつながるはず。
人間の可視領域はあくまで人間の範囲でしょう?
自分が見えているものだけで決めちゃだめ。
「世の中の決まり」も人間が作ったものだから、
当然だと思わずに疑問を呈す姿勢が大事だと思っている。
医学も科学も変化し続けているんだから、常識や規則を覆そうという意識が
新しい発見や発明の鍵を握っているんじゃないかな。

ーーご自身の価値観に影響を与えた人っていらっしゃいますか。

Joke:残念ながら反面教師ばかりかなぁ。
プリントを配ってプリントに書かれた内容を全部読み上げる先生とか。
つまらない授業のときは「テストで100点とるから寝かせて」と先生に言って本当に満点を取ったことも。
「おかしいと思ったら声を上げる」
「無理だと思わずにまずは実践する」
こうした考え方は、自分のベースになっている。
医学部受験も志望校に合格することはできなかったけれど、
最初から「挑戦したってムリ」という風には思いたくなかった。
大学受験レベルの数学や化学をしっかり勉強できたのはいい経験だし、何より面白かったからね。
科学にのめり込んでからは、ニュートンとアインシュタインの考え方にかなり影響を受けたと思うよ。

ーーJokeさんは何でも挑戦されますよね。
歴史の本を読むだけでなく、その舞台となった土地を旅されているし。
すぐに行動するようになられたきっかけってあったのでしょうか。

Joke:実行主義になったのは、高校時代に大切に思い合っていた子が
自殺したことが大きく影響していると思う。
思っているだけで行動しなかったら何も変わらないと学んだ。
当時、彼女が亡くなって1、2週間たったときは、
「彼女の分まで人生を楽しもう」と誓ったけれど、
よくよく考えると、俺はどんなに頑張っても一人分の人生しか生きられないと気づいた。
だからこそ、彼女が俺の生き方を見て「面白い」と思ってもらえるように、
「興味をもったら即行動」をポリシーにしようと決めた。

ーーそうした経験が実行主義の背景にったのですね。
システムエンジニア(SE)を目指されたのはその頃でしょうか。

Joke:通っていたのが商業高校で、
当初は税理士になろうと思い、簿記1級を取得した。
ところがすぐに働くには税理士の資格取得には時間がかかると分かり、SEの道に転身した。
特にパソコンが好きなわけでもなく、入社時はダウンロードという言葉も分からなかった。
でも、システムを本気で極めるなら、豊富に仕事がある東京に行こうと決めた。

ーー若手社員のときはどんな感じだったのですか。

Joke:入社2か月で、仕事に身が入っていない40歳の同僚を叱りつけた記憶があるよ(笑)
成果を出すという視点で考えれば年齢なんて関係ないからね。
後輩ができてからは、「自分ができていないことを自覚した上で、そこを補うことを意識しながら
しっかり仕事に取り組め」と言っている。
研修一つ受ける時も受け身ではなくて、仕事にどう生かすかを考えて臨むようにって。

ーー人材育成の意識が若手の頃から発揮されているのですね。

Joke:そういえば高校のときから周囲に勉強を教えていたなぁ。
人材育成はもちろん、社員の採用や面接、研修に携わるのは楽しいと感じる。
面白そうな学生に出会って、その子の入社が決まった時は嬉しいし。

ーーJokeさんにとって面白い人とは?

Joke:尋常でない発想をもっている人かな。
科学者も、一見「馬鹿でしょう」というような考えをもっていないとなれない。

ーーJokeさんの発想力も尋常でないといつも思っていますが、
どうやって培われたのでしょうか。

Joke:何に対しても気にかけて、興味をもつようにすることだね。
新人研修で色んな学生や転職者に出会うたびに、
「なぜこの人にはそんな考え方が生まれるのだろう?」と興味をもち探究する。
自分以外の思考を知りたいという気持ちが強いかな。

ーーなるほど。今度は教育観についてお尋ねしますね。
教育者にどんな資質が必要だと思いますか。

Joke:教育者自身が学ぶ姿勢が一番大切だと思っている。
時代に合わせて変化していくものを学び取る姿勢。
例えば、親は「教える・しつける」という目線で考えることが多いけれど、
親自身も「子どもがなぜそんな風に考えるんだろう?」って子どもから学んでいかなくちゃ。
吉田松陰も松下村塾で維新の獅子たちと、互いに学び合うという関わり方をしていたんだと思う。
人から学ぶと、自分も進化できるし、周囲の人の成長にもつながるし、
ゆくゆくは自分を越えた後進を生み出すことにつながる。
だから、興味をもった相手なら年下でも師匠だと敬う。
教える対象者に興味をもって、相手目線で伝えると、
相手も受け入れやすくなると経験上考えているよ。

ーーだからJokeさんの言葉って心に響くのでしょうね。

Joke:周囲から「こんな社会人に出会ったことがない」とよく言われる。
気負わずに、ありのまま真実を伝えるからだろうね。
例えば、会社に不満を抱えている同僚がいたら、
「会社のために頑張れとは言わない。
そのかわり、自分が転職するときに必要な技術を身につけるという気持ちで取り組め」と言う。
心底思っていることを伝えれば、相手に伝わると信じている。
常に変化し続けて、自分の器を越えたいという思いがある。
何年後かに振り返って「あのときはバカなこと言っていたなぁ」と思いたいんだよね。
そして、死ぬときに後悔して死にたい。
後悔しないってことは自分が満足して死ぬってことでしょ?
モーツアルトもニュートンもアインシュタインも、
死ぬときは「まだ遣り残したことが…」と言いながら死んだんだと思う。

ーーその考え方、面白いですね。
大人の考えに染まらない「子ども心」を保つ秘訣は何ですか?

Joke:言いたいことは言う。そして言ったことは必ずやり切ることだね。
大人って遠慮するし、途中で現実に妥協して諦めることが多いから
その真逆を目指したい。
人の才能や可能性を大事にするっていうのも、有限実行を心がけている。
以前、友達の子どもが気持ち悪い蛾を指さして「取って〜」と言うから
「ひと肌脱ぐか!」という気持ちで捕まえたんだよね。
せっかく蛾に興味をもったのに何もしなければ、
昆虫学者への才能をその子がもっていた場合に、
それを掘り起こすチャンスをなくしちゃうことになるから。

ーーザ・有限実行ですね!
最後に、ワクワクする教育を可能にするにはどうしたらいいか聞かせてください。

Joke:教える側が「本当に興味のあること」を教えることだね。
「私はこんなに面白いと思っているからぜひあなたにも伝えたい」と思っていたら、
相手も身を乗り出して聴くと思う。
常識を打ち破った科学者たちの話は面白い。
それは彼らが本当にワクワクしたことを語っているから、好奇心や興奮が周囲にも伝わっていく。
学ぶ側は、自分の枠を決めないこと、そして言われたことを鵜呑みにしないことが大切だと思う。

☆☆☆☆☆

「相談にのっても見返りは求めない。
去る者は追わずだけど、頼りにしてくれる人を裏切ることは決してない。」

私が20歳のときに彼がメッセージに書いてくれていた言葉にしびれた。

知り合ってからの8年間で直接会ったのは2回だけ。
しかし、彼の放つ存在感は計り知れない。
節目ごとに彼の言葉にハッとさせられたり、支えられたりと、
彼の斬新な発想力と、相手のために本気で向き合う姿勢に何度救われたことだろうか。

インタビューを通じて、
「自然体で人を育てていく静かな情熱をもった人」という印象が強まった。
やりたいことにはどんどん果敢に挑戦する。
興味をもった人から吸収し、変化を愛する。
教育者として不可欠な資質を備えた人なのだと改めて実感した。

「科学や数学の面白さをいつか中学生たちに伝えていきたい」
終わり際に話していた夢を、彼はいずれ、思いもよらない方法で実現させるのではないか。
そして、そこから好奇心の芽を爆発させる子どもたちが増えていく。
私はそう信じている。
posted by メイリー at 22:15| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする