北川雄士さん。
博報堂のアカウントプランナーを経て、WEBマーケティング・CRMクラウドサービスのシナジーマーケティングの人事として7年半のキャリアを積む。
北川さんの現在の活動や想いについてはこちら。
「とにかくやってみよ」
「伝説の人事」と呼ばれる彼は、1年半前にフリーランスの道を歩み始め、
<社外人事部>として採用・研修・評価制度設計や、ときに社員面談なども行っている。
また、「人は発信することで内省し学ぶ」ということを信じて、
毎回違うメンバー、テーマでフリーに語る「ぶっちゃけ!」という会のファシリテーターや、
滋賀大学でのキャリア講座の講師など、多彩な顔を持つ。
人生の2大テーマとして、
日本のエエもん(モノ・考え方・組織・人)を東京以外から、日本に、世界に発信すること、
そして、出会った人一人でも多くを笑顔にすることを掲げ、
そのために若い人の可能性を最大化させようとする北川さん。
その背景と想いに迫りたい。
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――会社員時代から起業を念頭に置いていたとのことですが、
起業を考え始めたのはいつ頃からですか。
北川雄士さん(以下、北川):実家が商売していたのもあり、
ぼんやりと小学校くらいから自分でやりたいとは思っていました。
博報堂に約2年半勤めた頃に、ずっとサラリーマンをやるつもりがないのなら、
早く辞めるべきだと起業を意識した。
博報堂退職後、学生時代にインターンさせてもらっていた
シナジーマーケティングの谷井社長に事業企画の相談にいきました。
そうしたら、「うちの会社で一緒にやらないか」とお誘いをいただいたんです。
起業したい気持ちもありましたが、
お世話になってきた谷井さんはじめ社員の皆さんに恩返しするという意味も込め、
一旦起業は横において、入社を決めました。
人事未経験でしたが、人事部門の立ち上げから、採用、研修、評価、配置まで一手に引き受けました。
――未経験でも立ち上げから任されるって、非常に信頼されていたんですね。
社長からは、どんな点で影響を受けたのですか。
北川:谷井さんからは、謙虚であることがいかに大切かを学びました。
僕自身、幼い頃から祖父に「人は自ら生きているのではなく、生かされている存在だ」と言われて育ってきたのですが、谷井さんは、その考え方をまさに体現している方です。
だから、彼のまわりには彼をサポートする人が集まってくるのだと思います。
――北川さんにとって、人事は天職だと考えていますか。
北川:未経験でしたが、やりはじめてすぐに、人事は天職じゃないかと思いました笑。
人前で話すことや、社員みんながうまくいく仕組みをつくることが好きですし、
特に採用では、自分がやってきた広告業界での経験がすごく活きるんですよ。
アクセル全開で人事をやっていました。
毎年1,000名からの学生や転職者の方と出会い、
会社もどんどん人が増えて新たな課題も出てくる毎日でしたから、
気付けばどんどん時間が過ぎ、乗りかかったからには全力でやるしかないと時間が過ぎていきました。
――応募してきた学生さんたちは北川さんの人柄や雰囲気に惹きつけられるのですね。
その理由は何だと思いますか。
北川:自分の大事なものを明確にして、全力投球な姿勢やエネルギーが、
相手に伝わったんじゃないのかなと思います。
僕は社長の想いに共感していたので、その想いをまっすぐ伝え続けていた。
だから「あの人がそこまで言うなら、この会社いいかも」と思ってもらえたのかもしれないですね。
もちろん、応募者一人一人の人生も全力で考えていました。
不採用の学生にも、どうするべきかをフィードバックしますし、
たとえ非常に優秀な学生でも、他にもっと合う会社があると思えば、うちに来てとは言わなかった。
「相手に寄り添うこと」も、僕が大事にしているものの一つです。
会社説明会では学生に「来てくれてありがとう」と伝えるところから始めていました。
自発的に来ている子ばかりでもないし、緊張している子だって多い。
だからこそ、彼らと同じ目線に立って、なるべく「ぶっちゃけ!」の姿勢で
ここは心を開いて双方が採用・就職活動に向き合えるようにというメッセージを伝えていました。
――「来てくれてありがとう」って言われたら、すごく安心するだろうなと思います。
これまでの人生で、北川さんの価値観に影響を及ぼした本は何でしたか。
北川:大きな影響を受けた本は、『道(タオ)』という老子の本と、『論語』です。
本を読むのは好きで、小説から経営者の本や、人事、マーケティングのビジネス書など、
たくさん読んできましたが、歴史の本や古典は非常に価値があるなと感じています。
中国の諸子百家などは数千年の歴史を経て、今も語り継がれているということは、
道徳観や人としての大切にすべき筋みたいなものが要約されているということだと思います。
ここには人間の不変の真理があると思うんですよ。
――『道』という本は、どんなきっかけで手に取られたのですか。
北川:大学生のとき、価値観の拠り所を探していたんです。
自分のまわりには20年の間に大変な苦労を乗り越えている友人たちがいて、
普通に公立の小中高に通ってきた自分には挫折経験がないのがコンプレックスでした。
ですが、老子の「無為自然」という考えにふれて、自分の在り方を肯定されたような気がして。
こだわらない、でも流されない。これが人間の本質なんじゃないかと思ったんです。
『論語』では、「同調するのではなく調和を大事にする」という
「和而不同(わじふどう)」の教えに出会って、
「まさに僕の大事にしていることやん!」と思いましたね。
「調和」は人事でも大事にしている価値観です。
社員の異なるキャラクターを受け入れて、
同じ方向を向いた一つの組織をつくっていくのが人事ですから。
☆後編につづく☆