☆前編はこちら☆
――「無為自然」、「和而不同」。これらが価値観の拠り所なのですね。
では、ご自身に大きな影響を及ぼした「旅の経験」ってありますか。
北川:バックパックでヨーロッパを一周したことです。
学生時代、大学を休学してイギリスへ語学留学していたのですが、
3ヶ月ほどで決まったプログラムをこなすことに飽きてしまいました笑
何も決まっていない明日を生きてみたい!と思って、行く先も決めずふらっと旅に出るんです。
朝起きたときに、その夜どこで寝るかが決まっていない経験は、今につながるいい経験でしたね。
答えを誰かに与えられるのではなく、自ら創り出すというのを体験しつづける毎日。
行き先を自分で決める楽しさを味わったし、意外と何とかなる。
初野宿はコペンハーゲンの排水溝。
寝る前はすごくドキドキしたけれど、朝までぐっすり熟睡しました(笑)
――「意外と何とかなる」という言葉は、今の私の心にすごく響きました。
今度は現在のお話に戻りますが、独立のきっかけを教えていただけますか。
北川:家族・会社・仕事、この3つのタイミングが重なったのがきっかけです。
会社の成長が一段落し、自分が立ち上げてきた仕事を担ってくれるメンバーが育ち、
家族の病気と子どもの成長が、ちょうど同じ時期に重なりました。
そんな中、今年の年末に地元の滋賀県彦根市にUターンします。
子どもが大きくなってきて、この子たちの地元を早く決めてあげたいし、
自分が踏ん張る場所をどこにするかと考えたら、自分の育った地元だと思ったからです。
これまで家をあまり顧みず仕事ばかりやっていましたから、
仕事と家族のバランスを大事にしようと思いました。
フリーになってから、子どもの参観日や幼稚園のイベントにも参加できるようになり、
子育てを通じて、これまでとはまた違った豊かさを味わえています。
僕自身の将来という点では、まだまだ漠然としたテーマしか設定できていないのですが、
今は「走ってたら、もう少し具体的なやりたいことに出逢うやろ」と思っています。
――それぞれのタイミングが、一歩を踏み出すチャンスにつながっていったんですね。
北川さんのブログを読んでいたら、人生の2大テーマの一つが
「日本から世界に発信していける産業を東京以外の地域から発信すること」とありました。
どんな想いを持っているのでしょう。
北川:地方に帰ることを決めたら、そっちがオモロくなればいいなぁと。
週末だけ盛り上がるとかじゃなくて、結局多くの若い人が移動(移住)するのが何より大切です。
そのためには、地方に産業と雇用を生み出す必要があるので、
東京大阪で働いているけど、そんな仕事や会社があるなら移住してもいいかもと思ってもらえる仕組みづくりをしたいです。
人事をしていて、「仕事のために仕方なく東京や東京に近い郊外に住む」という人が多い現状に、違和感がありました。
雇用が東京に集中しているために、住む場所や子どもと過ごす時間に制約が生まれて、みんな苦しそうです。
仕事さえあれば、地方で住みたいって人は結構いる感覚がありました。
昔から地方の商店街では、隣人同士で、ものを融通し合い、
子育ても助け合うような空気がありました。
こうしたコミュニティーを僕たちの世代なりの形で復活させて、
Uターン、Iターンした人が、地元の人たちとも交流しながら活躍できるような会社をつくっていきたいですね。
――2大テーマのうち、もう一つは「若い人の可能性の最大化」を目指されているとのこと。
「ぶっちゃけ!」で多くの学生に会われるなかで、
彼らにどんなメッセージを伝えたいと思っておられますか。
北川: まずは、たまたま身近にあった会社で働いてみようよと伝えたいですね。
就活情報の洪水のなかから最高の会社を選ぼうとすればするほど、
メジャーな会社にエントリーが集まり、そこでの化かし合い競争に疲弊するという循環があります。
よく、就活は恋愛と似ているといいますが、彼氏彼女を選ぶときに、
多くの人から最良の、、、なんて選び方しないですよね。
「自分の世界って結局、半径5メートルくらい」だと腹をくくることが必要です。
「この仕事をしっかりやるんだ」という根性を持てば、悩む時間が減って、
やりたいことに集中できるはずです。
「ぶっちゃけ!」に参加してくれる学生たちを見ていると、
「話を聴いてほしい」と思っている子が多い。
本音を発信できる場があり、それを受け止めてくれる人がいれば、たいていの悩みは自分で解決できます。
みんなで腹を割って話すと、「不安なのは自分だけじゃない」と気づき、
自分の道を走っていけるようになるんです。
彼ら一人一人の可能性を否定したり、つぶしたりせず、
「どんどんチャレンジしたらええやん」という土壌づくりに貢献したいと思っています。
☆☆☆☆☆
相手の可能性の「源泉」に気づかせる人。
彼のお話を思い出せば思い出すほど、そんな印象が強くなった。
北川さんが、一人一人のエネルギーが湧き出すスポットを見つけられるのはなぜか。
それは、彼自身がまっすぐ全力で生きていて、
相手のいいところを曇り一つない目で見つめ、
相手のなかにある矛盾も弱さもひっくるめて包み込んでいるからなのだろう。
インタビュー後、私の価値観を掘り下げて言語化する時間をとっていただいたのだが、
彼の問いかけによって、ずっと蓋をしていた「価値観の箱」が開かれて
「私が本当に大事にしているのって、これなんだ!」と気づく瞬間を何度も味わった。
「人の可能性」を心から信じている人が発する問いは、相手の心に火をつける。
彼に出会ったことで、信じた道を走りださずにはいられない人が、
これからもどんどん増えていくのだろうと思う。