2016年01月24日

食とサービス業への愛に満ちたソムリエ file.71

食とホスピタリティーのプロ、佐藤阿友美さん。
ワインや食品の輸出入・卸を行う中島董商店にて、
ソムリエ資格を活かし、高級ショップ・レストランにワインを提案する。
紹介してくれた先輩からは「食への愛に満ちた人」と聞く。
その愛がどこから生まれてきたのだろうか。

☆☆☆☆☆

――ワインの輸入業の仕事に就かれる前にどんな経験をされてきましたか。

佐藤阿友美さん(以下、佐藤):現職の前には、人材教育業を母体としたアチーブメントグループで3年4カ月の間働いていました。
大学時代はホテルのコンシェルジュを目指して、
ホテル業界志望者の専門学校と大学とダブルスクールをしていたんです。
ラグジュアリーホテルが好きな母親に、小さい頃から色々なホテルに連れていってもらって、
ホテルの空間に憧れをいだくようになりました。
「あなたはホテルマンに向いてると思う」
そう言って母から手渡された本が、日本最高峰のコンシェルジュと言われる阿部佳さんの
『わたしはコンシェルジュ』
元々人を喜ばせるのが好きだった私は、
「決してNoと言わない」、「お客様に寄り添う」という指針に強く共感し、
接客に必要になる英語を学ぼうと思い、上京して英文学科へ進みました。
「東京でいろいろ吸収してきなさい」という母の言葉には、
自分に合った道を勧めてくれた感謝と、
敷かれたレールの上を歩いているような気持ちとの葛藤がありましたが、
それが「社会の中で自分の価値を高めたい」という気持ちにつながっていったように思います。

――ホテル業界から人材教育へと変化したきっかけは何だったのでしょう。

佐藤:就活時にお付き合いしていた人が、ベンチャー志向が強く、
「他の業界も見ておくといいよ」というアドバイスをくれました。
ベンチャーの社長さんたちの情熱に心を動かされ、
「人の転機に関わる」人材業界の営業を経験したいと思うようになっていきました。
もちろんホテル業界も受けて、いくつか内定をいただいていたのですが、
自分一人で仕事を回せるようになる力を身につけるなら営業がいいなと思いました。
あるベンチャー企業に行こうと決めたものの、
内定式前日に「どうもしっくりこない」とモヤモヤを感じていて…。
アチーブメントの採用選考で出会った社員の方々の、
吸い込まれるようなキラキラした表情が頭にちらついたんです。
そんなとき、偶然にもアチーブメントに内定した友人から
「追加募集があるみたいで、受けてみない?」と電話がかかってきて…!
運命的ですよね。
内定していた会社には正直に内定式に出られる気持ちではないことを伝え
アチーブメントの選考を受け、入社することになりました。

――それで営業の仕事に?

佐藤:と思ったらなんと配属先は立ち上がったばかりのダイニング事業部。
最終選考で、サービスに非常に力を入れているグローバルダイニングのモンスーンカフェでのアルバイトで、
ホスピタリティーとサービスを学んだ経験を話していたからでしょう。
新卒でそこに配属されたのは私だけ。
まわりは「営業でないけどいいの?」と心配してくれましたが、
人事から「何にもないけど何でもやれる仕事だよ」と言われ、
私は「超楽しそう!」と思ってOKしたんです。
後で、選考をしていた監査の方が「この子がサービス業で働かないと日本経済の損失だ」と
おっしゃってくださったと聞いて、その言葉も大きな後押しになりましたね。
フェリーチェという「食から人生をプロデュースする」というコンセプトの
和食と自然派ワインのお店で、ホールも売上管理もアルバイトの管理も任されました。

――きっと佐藤さんの才能と経験に裏付けられたホスピタリティーを見抜かれていたのでしょうね。
モンスーンカフェでのアルバイトのお話を聞かせていただけますか。

佐藤:モンスーンカフェとの出会いは、
スキーサークルだったこともあり、なかなかホテルや飲食業のアルバイトができず、
選考を受けたレストランからも返事が来ない…と思っていた矢先の出来事でした。
採用広告の「サービスを頑張りたい人歓迎」という文字に惹かれて電話をかけたら
「サービスを学びたいならうちに来なよ」と言われて。
その電話の直後に他のレストランから合格の通知が来て迷ったものの、
説明だけ聞こうとモンスーンカフェに行ったら、店長が非常にアツい人で!
「神奈川一の飲食店をつくりたい」という夢を公言する姿がかっこよくて、
モンスーンカフェのホールで働くことに決めました。

グローバルダイニングは、お店を立ち上げる人たちの登竜門のような場所。
社員もアルバイトも関係なく、自分たちの貢献度に合わせた時給を
ミーティングで設定し、互いに高め合っていくという面白い仕組みでした。
阿部さんの本にあったサービスの心得をまさに体現しているお店で、
ここでの4年間で「サービスの真髄」を学びました。
本当にご縁に恵まれていて、思いが現実をつくり出しているとつくづく思います。

――モンスーンとフェリーチェというサービスの世界で働いていて
嬉しいときはどんなときでしたか。

佐藤:私、お客さんがメニューを見てワクワクしているときの顔を見るのが好きなんです。
メニューを選んでいるときって、日々の雑念が消えて
目の前の料理に集中できるでしょう?
お客さんが「今まさにウェイターを呼ぼうと思っていた瞬間」にお席に行って、
お客さんの気分や味、分量などのニーズを引き出し、
最適な注文をコーディネートするのが好きですね。
「すきまを埋めるセメント」のような存在になりたいんです。
自分なりのスパイスを加えて、サービスを極めていきたいという思いが強まりました。

――大変だった経験はありますか。

佐藤:ウェイターには二種類あるんです。
一つは、お客さんの満足度は60%程度だけれど席数を多く見渡せるタイプ。
もう一つは、カバーできる席数は少ないけれど、個々のお客さんの満足度を120%に高められるタイプ。
私は後者として力を発揮するタイプでした。
利益を生み出すなら前者が、リピーターを生むには後者が必要で、両方のバランスが重要。
モンスーンで働いていたときは前者の力がなかなか身につけられずに
悩んだ時期もありました。

――その壁はどのように乗り越えていったのですか。

佐藤:一つの動線で二つをこなす「ワンウェイ・ツージョブ」を意識してムダを減らすようにすると、
徐々に席数を見渡せるようになってきました。
例えば飲み物をつぎながらお客さんの注文を聞きに行くというように。
店長からもらった「森を見ているからこそ、木も大事にできる」というアドバイスのおかげです。

また、フェリーチェではジェネラリストとして多種多様な業務を行うことが求められていたため、
いかに自分で時間をつくり、優先順位をつけてこなすかを学ぶ場でもありました。
ホールでは、個々のお客さまの満足度を最大限高めるという自分の本領を発揮でき、
それが自己承認につながったと思います。
この2つの壁を突破した経験は今も活きています。
アチーブメントのダイニング事業部をやめるとき、
ちょうどモンスーンカフェ時代にお世話になった店長が独立するタイミングで、
一緒に働かないかと誘ってもらったときは非常に嬉しかったですね。

――食への愛、サービスへの想いはどこから湧いてくるのでしょうか。

佐藤:母子家庭だったこともあり、母親の影響を大きく受けてきたんです。
「食力(くいりき)をつけなさい」と言われて育ってきたので
活力の素である「食」の大切さはずっと自分の中にあったんでしょうね。
アチーブメントの選考で自分の想いを宣言する場面があり
「食べることは生きること」と宣言した記憶があります。
ダイニング事業部では夢中で働きましたが、本当に楽しかったのでやめるときは涙が出ましたね。
でも、一つの道を極めるスペシャリストになりたいという思いがありましたし、
人との出会いを重ねていくうちに、仕事だけに没頭するのではなく
「大切なものを大切に生きる」という意識が強まっていきました。

――今のお仕事に就かれるきっかけは何でしたか。

佐藤:ダイニングの仕事をしているときに、
ワインに魅せられている経営層は多く、ワインの世界を滔々と語る姿を見て、
「これほどまでに人を惹きつけるワインの魅力を知りたい」という思いが湧いていました。
ワイン1本に、1時間語り続けられるほどのストーリーが込められているんですよ。
ちょうどあるとき、フェリーチェの常連のお客さんから
「ワインの世界を極めなよ」と名刺を渡され、
彼がワインインポーターのマネージャーであることがわかりました。
そこからご縁をいただき、2012年8月から働き始めました。

――ワインの世界で働いていて今、どんな風に感じていますか。

佐藤:最初はワインショップやクオリティショップへの営業をしていて、
この4月から念願のレストランへの営業となりました。
レストランのソムリエの方々は知識も経験も豊富でこだわりも強いので
緊張感は大きいですね。
ソムリエ資格を取ってからも勉強の日々。
今のワインや食のトレンド、競合の商品知識、食文化など
お客さんにとって有用だと思ってもらえるような新しい知識を吸収することが大切で、
同時に営業としての目標も達成していきたいと思っています。
先日フランス出張でワインの生産者の想いを聴き、
ワインがつくり出す空間の魅力にももっと迫っていきたいという思いも強まっています。
ここでしっかり経験を積んで、いつか食やサービスに関わるビジネスをやれたらいいなと思っています。

☆☆☆☆☆

才能と努力を掛け合わせてワインの道を極めるプロ。

天性のおもてなしの姿勢はお母様をはじめ、採用選考に立ち会った方、一緒に働いていた方々も気付いていたのだろう。
常に自分の足りないものを補い、得意なところを伸ばしていくという謙虚さと向上心が
彼女の才能や魅力の輝きをますます強めているのだと感じた。

専門性を磨きながら、人生の転機のたびに、自分が一番進みたい道はどれか?と
自分の心の声に素直に生きていく。
そうした芯の強さと、しなやかさをもった生き方に、心から憧れる。

インタビュー前後のやり取りでも彼女のおもてなしと真心、
そして食と食がつくり出す空間への愛情に、何度も胸が熱くなった。

今後も、ご縁を大切にしながら彼女にしか切り拓けない道を歩まれていくのだろう。
posted by メイリー at 14:10| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月13日

可能性の源泉を掘りおこし、心に火をつける file.70(後編)

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☆前編はこちら☆

――「無為自然」、「和而不同」。これらが価値観の拠り所なのですね。
では、ご自身に大きな影響を及ぼした「旅の経験」ってありますか。

北川:バックパックでヨーロッパを一周したことです。
学生時代、大学を休学してイギリスへ語学留学していたのですが、
3ヶ月ほどで決まったプログラムをこなすことに飽きてしまいました笑
何も決まっていない明日を生きてみたい!と思って、行く先も決めずふらっと旅に出るんです。
朝起きたときに、その夜どこで寝るかが決まっていない経験は、今につながるいい経験でしたね。
答えを誰かに与えられるのではなく、自ら創り出すというのを体験しつづける毎日。
行き先を自分で決める楽しさを味わったし、意外と何とかなる。
初野宿はコペンハーゲンの排水溝。
寝る前はすごくドキドキしたけれど、朝までぐっすり熟睡しました(笑)

――「意外と何とかなる」という言葉は、今の私の心にすごく響きました。
今度は現在のお話に戻りますが、独立のきっかけを教えていただけますか。

北川:家族・会社・仕事、この3つのタイミングが重なったのがきっかけです。
会社の成長が一段落し、自分が立ち上げてきた仕事を担ってくれるメンバーが育ち、
家族の病気と子どもの成長が、ちょうど同じ時期に重なりました。
そんな中、今年の年末に地元の滋賀県彦根市にUターンします。
子どもが大きくなってきて、この子たちの地元を早く決めてあげたいし、
自分が踏ん張る場所をどこにするかと考えたら、自分の育った地元だと思ったからです。

これまで家をあまり顧みず仕事ばかりやっていましたから、
仕事と家族のバランスを大事にしようと思いました。
フリーになってから、子どもの参観日や幼稚園のイベントにも参加できるようになり、
子育てを通じて、これまでとはまた違った豊かさを味わえています。
僕自身の将来という点では、まだまだ漠然としたテーマしか設定できていないのですが、
今は「走ってたら、もう少し具体的なやりたいことに出逢うやろ」と思っています。

――それぞれのタイミングが、一歩を踏み出すチャンスにつながっていったんですね。 
北川さんのブログを読んでいたら、人生の2大テーマの一つが
「日本から世界に発信していける産業を東京以外の地域から発信すること」とありました。
どんな想いを持っているのでしょう。

北川:地方に帰ることを決めたら、そっちがオモロくなればいいなぁと。
週末だけ盛り上がるとかじゃなくて、結局多くの若い人が移動(移住)するのが何より大切です。
そのためには、地方に産業と雇用を生み出す必要があるので、
東京大阪で働いているけど、そんな仕事や会社があるなら移住してもいいかもと思ってもらえる仕組みづくりをしたいです。
人事をしていて、「仕事のために仕方なく東京や東京に近い郊外に住む」という人が多い現状に、違和感がありました。
雇用が東京に集中しているために、住む場所や子どもと過ごす時間に制約が生まれて、みんな苦しそうです。
仕事さえあれば、地方で住みたいって人は結構いる感覚がありました。

昔から地方の商店街では、隣人同士で、ものを融通し合い、
子育ても助け合うような空気がありました。
こうしたコミュニティーを僕たちの世代なりの形で復活させて、
Uターン、Iターンした人が、地元の人たちとも交流しながら活躍できるような会社をつくっていきたいですね。

――2大テーマのうち、もう一つは「若い人の可能性の最大化」を目指されているとのこと。
「ぶっちゃけ!」で多くの学生に会われるなかで、
彼らにどんなメッセージを伝えたいと思っておられますか。

北川: まずは、たまたま身近にあった会社で働いてみようよと伝えたいですね。
就活情報の洪水のなかから最高の会社を選ぼうとすればするほど、
メジャーな会社にエントリーが集まり、そこでの化かし合い競争に疲弊するという循環があります。
よく、就活は恋愛と似ているといいますが、彼氏彼女を選ぶときに、
多くの人から最良の、、、なんて選び方しないですよね。
「自分の世界って結局、半径5メートルくらい」だと腹をくくることが必要です。
「この仕事をしっかりやるんだ」という根性を持てば、悩む時間が減って、
やりたいことに集中できるはずです。

「ぶっちゃけ!」に参加してくれる学生たちを見ていると、
「話を聴いてほしい」と思っている子が多い。
本音を発信できる場があり、それを受け止めてくれる人がいれば、たいていの悩みは自分で解決できます。
みんなで腹を割って話すと、「不安なのは自分だけじゃない」と気づき、
自分の道を走っていけるようになるんです。
彼ら一人一人の可能性を否定したり、つぶしたりせず、
「どんどんチャレンジしたらええやん」という土壌づくりに貢献したいと思っています。

☆☆☆☆☆

相手の可能性の「源泉」に気づかせる人。
彼のお話を思い出せば思い出すほど、そんな印象が強くなった。

北川さんが、一人一人のエネルギーが湧き出すスポットを見つけられるのはなぜか。
それは、彼自身がまっすぐ全力で生きていて、
相手のいいところを曇り一つない目で見つめ、
相手のなかにある矛盾も弱さもひっくるめて包み込んでいるからなのだろう。

インタビュー後、私の価値観を掘り下げて言語化する時間をとっていただいたのだが、
彼の問いかけによって、ずっと蓋をしていた「価値観の箱」が開かれて
「私が本当に大事にしているのって、これなんだ!」と気づく瞬間を何度も味わった。

「人の可能性」を心から信じている人が発する問いは、相手の心に火をつける。
彼に出会ったことで、信じた道を走りださずにはいられない人が、
これからもどんどん増えていくのだろうと思う。
posted by メイリー at 22:04| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

可能性の源泉を掘りおこし、心に火をつける file.70(前編)

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北川雄士さん。
博報堂のアカウントプランナーを経て、WEBマーケティング・CRMクラウドサービスのシナジーマーケティングの人事として7年半のキャリアを積む。
北川さんの現在の活動や想いについてはこちら。
「とにかくやってみよ」

「伝説の人事」と呼ばれる彼は、1年半前にフリーランスの道を歩み始め、
<社外人事部>として採用・研修・評価制度設計や、ときに社員面談なども行っている。
また、「人は発信することで内省し学ぶ」ということを信じて、
毎回違うメンバー、テーマでフリーに語る「ぶっちゃけ!」という会のファシリテーターや、
滋賀大学でのキャリア講座の講師など、多彩な顔を持つ。

人生の2大テーマとして、
日本のエエもん(モノ・考え方・組織・人)を東京以外から、日本に、世界に発信すること、
そして、出会った人一人でも多くを笑顔にすることを掲げ、
そのために若い人の可能性を最大化させようとする北川さん。
その背景と想いに迫りたい。

★★★★★

――会社員時代から起業を念頭に置いていたとのことですが、
起業を考え始めたのはいつ頃からですか。

北川雄士さん(以下、北川):実家が商売していたのもあり、
ぼんやりと小学校くらいから自分でやりたいとは思っていました。
博報堂に約2年半勤めた頃に、ずっとサラリーマンをやるつもりがないのなら、
早く辞めるべきだと起業を意識した。

博報堂退職後、学生時代にインターンさせてもらっていた
シナジーマーケティングの谷井社長に事業企画の相談にいきました。
そうしたら、「うちの会社で一緒にやらないか」とお誘いをいただいたんです。
起業したい気持ちもありましたが、
お世話になってきた谷井さんはじめ社員の皆さんに恩返しするという意味も込め、
一旦起業は横において、入社を決めました。
人事未経験でしたが、人事部門の立ち上げから、採用、研修、評価、配置まで一手に引き受けました。

――未経験でも立ち上げから任されるって、非常に信頼されていたんですね。
社長からは、どんな点で影響を受けたのですか。

北川:谷井さんからは、謙虚であることがいかに大切かを学びました。
僕自身、幼い頃から祖父に「人は自ら生きているのではなく、生かされている存在だ」と言われて育ってきたのですが、谷井さんは、その考え方をまさに体現している方です。
だから、彼のまわりには彼をサポートする人が集まってくるのだと思います。

――北川さんにとって、人事は天職だと考えていますか。

北川:未経験でしたが、やりはじめてすぐに、人事は天職じゃないかと思いました笑。
人前で話すことや、社員みんながうまくいく仕組みをつくることが好きですし、
特に採用では、自分がやってきた広告業界での経験がすごく活きるんですよ。
アクセル全開で人事をやっていました。
毎年1,000名からの学生や転職者の方と出会い、
会社もどんどん人が増えて新たな課題も出てくる毎日でしたから、
気付けばどんどん時間が過ぎ、乗りかかったからには全力でやるしかないと時間が過ぎていきました。

――応募してきた学生さんたちは北川さんの人柄や雰囲気に惹きつけられるのですね。
その理由は何だと思いますか。

北川:自分の大事なものを明確にして、全力投球な姿勢やエネルギーが、
相手に伝わったんじゃないのかなと思います。
僕は社長の想いに共感していたので、その想いをまっすぐ伝え続けていた。
だから「あの人がそこまで言うなら、この会社いいかも」と思ってもらえたのかもしれないですね。
もちろん、応募者一人一人の人生も全力で考えていました。
不採用の学生にも、どうするべきかをフィードバックしますし、
たとえ非常に優秀な学生でも、他にもっと合う会社があると思えば、うちに来てとは言わなかった。

「相手に寄り添うこと」も、僕が大事にしているものの一つです。
会社説明会では学生に「来てくれてありがとう」と伝えるところから始めていました。
自発的に来ている子ばかりでもないし、緊張している子だって多い。
だからこそ、彼らと同じ目線に立って、なるべく「ぶっちゃけ!」の姿勢で
ここは心を開いて双方が採用・就職活動に向き合えるようにというメッセージを伝えていました。

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――「来てくれてありがとう」って言われたら、すごく安心するだろうなと思います。
これまでの人生で、北川さんの価値観に影響を及ぼした本は何でしたか。

北川:大きな影響を受けた本は、『道(タオ)』という老子の本と、『論語』です。
本を読むのは好きで、小説から経営者の本や、人事、マーケティングのビジネス書など、
たくさん読んできましたが、歴史の本や古典は非常に価値があるなと感じています。
中国の諸子百家などは数千年の歴史を経て、今も語り継がれているということは、
道徳観や人としての大切にすべき筋みたいなものが要約されているということだと思います。
ここには人間の不変の真理があると思うんですよ。

――『道』という本は、どんなきっかけで手に取られたのですか。

北川:大学生のとき、価値観の拠り所を探していたんです。
自分のまわりには20年の間に大変な苦労を乗り越えている友人たちがいて、
普通に公立の小中高に通ってきた自分には挫折経験がないのがコンプレックスでした。
ですが、老子の「無為自然」という考えにふれて、自分の在り方を肯定されたような気がして。
こだわらない、でも流されない。これが人間の本質なんじゃないかと思ったんです。
『論語』では、「同調するのではなく調和を大事にする」という
「和而不同(わじふどう)」の教えに出会って、
「まさに僕の大事にしていることやん!」と思いましたね。

「調和」は人事でも大事にしている価値観です。
社員の異なるキャラクターを受け入れて、
同じ方向を向いた一つの組織をつくっていくのが人事ですから。

☆後編につづく☆
posted by メイリー at 21:47| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月21日

「今・ここ」にしか生まれないハーモニーをつくる file.69(後編)

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前編はこちら

――星加さんのされていることって「場づくり」という言葉に
はまりきらない気がしてきました。

星加:そうですね。「場づくり」だけではないですね。
よく「星加さんは風みたいだね」と言われます。この表現がしっくりくるんですよ。
比喩的な表現になりますが、
強い風もあれば弱い風、春風、あたたかい風、広がっていく風もある。
こうした色々な風を吹かせて、相手からくる風も受け止めて循環を生み出すような。
色んな音を引き出しハーモニーを創り出す指揮者に近いイメージでしょうか。
その場に生じたエネルギーや、人の奥底に眠っている可能性をとらえて、
増幅させ、伝え返していくというのを繰り返しているんです。

そうすることで、無意識に自分を覆っている衣を脱げる場を作ってるんですよ。
「脱いだら意外と楽なんだ」
「むしろありのままでいた方がパワーが出るんだ」と気づいてもらいたいなと。
これは1対多のときも、1対1のキャリアカウンセリングや
普段のコミュニケーションでも大事にしていることですね。
だから、相手からいい風が吹いてきたら逃したくないと思っています。

――いい風を起こして、相手の風を全身で受け取ってハーモニーをつくっていく。
この面白さを味わった経験が過去にあったのでしょうか。

星加:原体験になっているのは、大学の合唱サークルに入って
人前でハーモニーをつくり、お客さんたちが感動してくれたことだと思います。
中高時代は「打ち込めるものが特にない」ことがコンプレックスでした。
「人前でステージに立ってみたい」と思っていたのに、話すのが苦手だと思い込んでいて。
でも大学では打ち込めるものを見つけようと合唱の世界に飛び込んで、
違う音(声)をもった人とハーモニーをつくるインパクトの大きさを
目の当たりにできて本当によかったと思っています。

――ハーモニーをつくる中で、星加さんはどんなことを大事にされていますか。

星加:僕は言葉以外の部分から汲み取ることが多いですね。
声色、表情、からだの動き、硬さとか。
初対面でも、いい意味でリラックスして抜け感がある人と、
壁をつくって自分の行動にブレーキをかけている人の違いが見分けられるようになりました。

後者のような人に会うと、
「もしこの人が100%のあり方をしたら、こんな風にもっと素敵なんだろうな」という様子が
心に浮かんでくるんです。
写真を撮るときも、相手が100%の状態になった瞬間を
シャッターに収めるようにしています。
自分が想像していた以上のエネルギーがあふれ出てくることもある。
それがまた面白いし、それに触れることを、追い求めているような気がします。

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――その感性というかセンスはなかなか誰でも真似できない気がします…!

星加:僕はこれは生まれもってのギフトなのかなぁと思っています。
ギフトに気づくには、とりあえず「いいな」と思ったら行動してみるしかない。
そして、やってみて、違ったらやめたらいい。
たくさん飛び込んで経験することで、しっくりくるものや、
そうでないものが少しずつ見つかり、少しずつ自分のギフトに気づくんじゃないでしょうか。

今でこそ、ファシリテーターも、カメラも、趣味のミュージカルも合唱も、
「今ここにしか生まれ得ないハーモニー」を奏でたいからやってきたんだって気づきましたが、
色々経験したからこそ分かったことですね。

――これから挑戦したいことや大事にしたいことは何ですか。

星加:好奇心旺盛なので色んなことに挑戦して、世界を広げていくのは好きなのですが、
今年は「深めていく時間」を大事にしたいですね。
人の可能性ともっと深く向き合い、引き出せるようになりたいなと。
まだ何を深めるかははっきり決めていませんが、
これやるんじゃないかな、というものはいくつかあります。
また次回お会いした時にはお話できるんじゃないでしょうか(笑)

それと、やっぱり「ハーモニー」を楽しむことはやり続けますね。人生のテーマですから。

このインタビューも「今・ここ」で二人が作り出したハーモニーが、
どう文字化されるのか、とても楽しみです。
こういう喜びに満ち溢れた時間を過ごせて、本当にありがたいです。
いつでも、「今・ここ」を楽しみ、味わうことを大事にしたいし、
そういう生き方を色んな人に見せて、伝えられる自分であり続けたいですね。

☆☆☆☆☆

「遠くに遠くに探し求めていた『目指すもの』が、実は、「今」からしか生まれない」
この言葉はインタビューから時が経った今も、
何か見失いそうなときに、私を原点に連れ戻してくれる。

相手(被写体)が気づいていない良いところを引き出すというカメラ。
相手の風を全身で受け取ってハーモニーをつくっていくという合唱。
これらとファシリテーター、インタビューとの意外な共通点があるというのは
非常に大きな学びだった。
風を感じ取り、その流れに自然とのっていけるような感覚を
私も少しずつ磨きたい。そう強く思った。

星加さんは、「深めていく時間」を過ごしながら、
人の可能性のさらに深いところとつながって、
今日もハーモニーを奏でているのだろう。
posted by メイリー at 01:05| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「今・ここ」にしか生まれないハーモニーをつくる file.69(前編)

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星加武史さん。
リクルートにて飲食店や企業採用情報サイトの営業、
大学生向けキャリア支援事業の立ち上げを経験した後、
『人の可能性を最大限に引き出す』場づくりに興味を持ち、独立。
高校生や大学生、アスリートキャリア支援講座のコンテンツ設計・ファシリテーターを中心に、
野外活動などを通した幼少・青年期の人間力形成にも携わる。
趣味は、カメラ、ミュージカル俳優、合唱、ロードバイクと幅広い。

☆☆☆☆☆

――2013年夏にお願いした「教育×キャリアインタビュー」以来ですね。
あれから色々な変化があったかと思いますが、現在の活動を教えていただけますか。

星加武史さん(以下敬称略):現在は主に就活生や若手社会人向けのキャリア支援講座で
コンテンツ設計やファシリテーターを行いつつ、
企業研修講師や高校生向けのワークショップにも携わっています。
あとは、数年前に登山の魅力に目覚めてから、登山ガイドとカメラの仕事も始まりました。
あとはライフワークとして子どもたちとミュージカルに出演しました。

――多彩な活動をされているのですね!
色々お聴きしたいのですがまずはカメラのお話を聞いていいですか。

星加:2年前までカメラは趣味だったんです。
ですが、戸高雅史さんという登山家の方と一緒に子どもキャンプに行って写真を撮っていたら、
親御さんたちが「うちの子がこんな表情するんだ…!」と非常に喜んでくださって。
それ以来、フォトグラファーも兼ねてキャンプや登山の引率をしてほしいという
依頼が増えてきました。
まだプチプロという感じですが、子どもたちが生き生きした瞬間をとらえようと思っています。

――いい瞬間をとらえるために心がけていることって何でしょう。

星加:「この表情を撮りたい」と思った瞬間にシャッターを切るに尽きるのですが、
カメラって撮影する人の無意識の部分も映し出すんですよ。
後で写真を見て「なぜこんなのが写ったんだろう?」って感じることありませんか。
あれは自分の無意識が注目したものが投影されているんです。

カメラも場づくりも「相手(被写体)が気づいていない良いところを引き出す」
という意味で、似ているなぁと思います。
例えばキャリア支援のワークショップでも、その場に参加している人や全体の変化をキャッチして、
「なんだかクラス全体が明るくなってきたね」、
「さっきより○○さん、いい表情してる」などと伝えるようにしています。

――カメラと場づくりにそんな共通項があるのですね。
就活生向け講座でファシリテーターをしていて、普段どんな風に感じていますか。

星加:僕が出会う就活生の約9割はこれまでレールに乗っかってきた子という印象です。
大学生までは、それで何とかやれますが、就活で突然自ら道をつくらざるを得なくなります。
ただ、逃げ場がないときだからこそ、彼らにとっては自分と深く向き合うチャンスなんです。

事前に彼らの状況を想像しながら、どうやったら自分の可能性に気づけるだろう、
自分に自信が持てる時間になるだろう、と
プログラムの設計を考えているときはすごく楽しいですね。
ですが、時には、講座の現場を見て、構想を全部手放すこともあります。
学生のその瞬間の状態によって必要なものが違うし、
参加者のニーズを遮ってこちらがやりたいようにやっても、つまらない場にしかならない。
例えば「元々コミュニケーションの質の深め方をテーマにするつもりだったんだけど
みんなの様子を見ているとコミュニケーションの数の増やし方に意識が向いてるみたいだね。どうする?」
と彼らに尋ねて、やる内容を決めてもらうんです。
用意してきたものを全て捨てるのも面白いですよ(笑)

ファシリテーターの自分が触媒になって、人を元気にする空間を生み出すのは
何度やっても楽しいなぁと感じます。

――当日現場に行って内容を変えることもあるとは…!
ワークの引き出しをたくさんもっている星加さんだから可能なのでしょうね。
いい講座やワークショップの条件って何でしょう。

星加:前に立つファシリテーターのあり方と、プログラムのコンテンツ、
そして受講者の状態がピタッと一致するときでしょうか。
特にファシリテーター自身の想いや願いがあるかどうかは大事ですね。
企業研修の場合なら、企業のトップや人事など、
受講者を取り巻く関係者たちの意向とどう噛み合わせるかという視点も大事になってきます。

――研修がうまくいかないときってありましたか。そんなときはどう浮上しているのでしょう。

星加:うまくいかないときはめちゃくちゃいっぱいありましたよ〜。
でも、その二度とない空間を最高のものにしたい、という気持ちが強いんです。
だから、そうならなかったときは、悔しくて悔しくて。
僕って普段は適当でいいかげんな人間なんですが(笑)、
キャリア支援においては100%のものを提供することにこだわっています。
そうしないと後悔します。
自分が関わった人が、自分に自信を取り戻し、
目をキラキラさせて次のステージに向かっていけるかどうか、がかかっていますから。
その責任を背負っているプレッシャーは大きいです。
でも、その瞬間に立ち会えるのは、仕事冥利につきます。

――今のお仕事は星加さんにとっての天職なのでしょうね。
ファシリテーターをしていて、一番つらいときってどんな場面でしたか。

星加:ファシリテーターや仕事に限らず日常もですが、自分の心に素直になれないときですね。
何かをうまくやったつもりでも、心がしっくりきていない。しかも理由がわからない。
心に素直に生きられるようになったのはついこの4, 5年なんですよ。

――つい4, 5年ですか。

星加:そう。31、32歳頃までは「自分がやりたいことって何だろう?」
「どの分野でスペシャリストを目指せばいいのか?」と試行錯誤の日々でしたから。
リクルート時代も、入社当時はバリバリの営業マンになろうと意気込んでいたのに
結果がついてこなくて悩んだ時期もありました。
リクルートを辞めた後も、モヤモヤした時期が続きました。
ファシリテーターの仕事をやりながら、
小学生向けの塾で国語を教えていたのですが、しっくりこない。
子どもたちと接するのは好きなので、一時期は小学校の先生を目指して専門の勉強をしていましたが、
結局続きませんでした。

そんなときキャリアフラッグの代表である
熊澤に「キャリア支援を手伝ってくれないか」と声をかけてもらったのが、大きな転機となりました。
学生時代に知り合った友人なのですが、何かご縁を感じて即座にOKしました。
これを契機に、いい循環に入っていきましたね。
気がついたら、目の前の仕事に没頭していました。
遠くに探し求めていた「目指すもの」が、実は、「今」からしか生まれないんだなって。
よく聞く言葉ですが、本当にそれを実感しました。

「夢をもたなきゃ」って言う学生が多いのですが、なくてもいいんですよ。
ある程度方向性を決めておけば、偶然の出来事やご縁を通して、自分の道が見つかっていきます。
それよりも「今、ここ」での経験を味わい尽くすことが大切。
前に進むばかりでなく、悩んでしゃがんだり、何歩も下がるときがあってもかまわないんです。
僕自身、今の自分があるのは、もやもやしながらも
20代から30代前半に経験を積み重ねたことが大きかったです。

目の前のことに本気でぶつかって、悩んで、そこから感じることを大切にするしかないですね。
posted by メイリー at 00:41| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする